お金はあっても、幸せそうに見えなかった父

会田さんの父親は、地方の古い地主の家系で、生まれながらの資産家でした。複数の不動産収入や配当収入があり、働かなくても十分生活できる資産状況だったため、会田さんが子どもの頃には、すでに会社勤めをしていませんでした。

父親は家にいることが多く、テレビを見ている日もあれば、ソファで昼寝をしている日もありましたが、時間を持て余し、どこか退屈そうで、その姿が「うらやましい」とは映りませんでした。

父親には資産管理のための仕事はあるものの、決まった仕事内容の繰り返しで大きな変化や刺激もありません。関わる人も限られており、「社会から必要とされていない」という孤独感を抱くようになっていったのでしょう。次第に家庭内での関わりや会話も少なくなり、家の中には閉塞感が漂っていました。

お金があっても幸せそうに見えなかった父親の姿が、「社会と関わり続ける」という会田さんの譲れない信念になっていったのです。

子どもたちに「3億円の資産」を隠し続けるわけ

会田さんには高校生と中学生の子どもがいますが、子どもたちには毎朝「行ってきます」と言って会社へ向かう姿を見せています。

「もちろん、働くことは楽じゃないです。でも、“社会と関わりながら生きる”って、大事なことだし、その姿を見せたいと思うんです」

その思いは、会田さんにとって譲れないことです。また、住まいや家電もごく一般的。贅沢を禁止しているわけではなく、家族旅行や外食も楽しみますが、夫婦ともに派手な消費には興味がないのです。

会田さんは実家や自分の資産状況について、妻には伝えていますが、子どもたちには話していません。

「将来、資産を譲る可能性はあるにせよ、子どもに、“うちはお金があるから大丈夫、働かなくても問題ない”とだけは思わせたくない。まずは自立して生きる力を身につけてほしいんです」

その言葉には、父親を見て育った経験と、子どもたちの将来を案じる気持ちがにじみ出ています。

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