(※写真はイメージです/PIXTA)
お金では買えない「社会とのつながり」の価値
内閣府の「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」によると、高齢者に50代の働く様子を振り返ってもらったところ、「知り合いはほぼ仕事関連の人たちだった」と答えた人が全体の22.6%に上りました。このことから、会社中心の生活を送ってきた人間が組織を離れると、社会から孤立するリスクが高いことが推測されます。
また、内閣府の「満足度・生活の質に関する調査報告書(令和7年)」によれば、非就業(無職)の人は正規雇用者に比べ、「人々に認められている」「社会の役に立っている」と実感するスコアが低い傾向にあります。資産があっても、社会的な承認や居場所を失ったことで、ケンジさんの精神はバランスを崩したのでしょう。
再就職の壁についても、前述の調査で50代のころを振り返った際、「経験を積んだ仕事で力を発揮していた(35.5%)」「同じ仕事を続けるつもりでいた(33.7%)」と答えた人が多い一方で、「リタイア後のキャリアに関する情報収集をしていた」という人はわずか2.8%にとどまりました。つまり、多くの人が「今の会社で培った経験が社外でもそのまま通用する」と錯覚し、自身の市場価値やスキルを客観視する準備を怠っていたことがうかがえます。その結果、他社で通用する汎用的なスキルを持たないまま勢いで早期退職してしまうと、転職市場で評価されず仕事の選択肢が狭まる現実が待っていると推測できます。
十分なお金で自由を得たはずが、人間関係や社会的承認、自身のポジションを失ったケンジさんの転落は、FIREに潜む見過ごされがちなリスクを示唆しています。
内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」
内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書(令和7年)」
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