昨今の老人ホームは、ホテルのような豪華な設備や手厚いコンシェルジュサービスを売りにする、ラグジュアリーな施設も存在します。豊かな老後を夢見て、多額の資産を投じるケースが増える一方で、契約の複雑さが招く予期せぬトラブルも後を絶ちません。理想の終の棲家を選んだはずの夫婦が直面した、厳しい現実を見ていきます。
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5年で消えた4,000万円と「追加費用」の壁
美津子さんの介護度が上がり、夜間の見守りや排泄介助が必要になると、施設側は斉藤さんに「特定施設入居者生活介護」の限度額を超える「上乗せ介護費用」の増額を提示しました。
「入居時には『手厚い体制だから安心してください』と言われました。しかし、実際に介助が必要になると、スタッフを専任で付けるための費用として、月額15万円の追加負担を求められたのです」
さらに多くの有料老人ホームでは、支払った一時金のうち、数割を「初期償却」として差し引き、残りを数年かけて均等に償却していく仕組みを採っています。斉藤さんが契約した施設では、初期償却が30%、償却期間が5年(60ヵ月)と設定されていました。
「入居して5年が経った今、一時金の未償却残高はほぼゼロ。今この施設を出ても、戻ってくるお金は1円もありません。一方で、今後の月額利用料は管理費の改定と介護費用の加算で、夫婦合わせて月50万円を超えると通告されました」
月30万円の年金に対し、支出は50万円。年間で240万円以上の貯蓄を取り崩す計算になります。7,000万円あった貯蓄も、入居一時金で5,000万円を支払い、日々の生活費を差し引けば、残高はすでに2,000万円を切っています。