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「自立」を尊重しすぎることの危うさ
「ずいぶん前から経済的に厳しかったようですが、私もローンの返済や子どもの教育費などがあり、余裕があるわけではありません。だから母も『生活が苦しい』とはいえなかったのでしょうね。なぜ、もっと早く気づくことができなかったのか……」
現在、和子さんは病院からリハビリ施設に移りました。当初、哲也さん自身が引き取って面倒を見ることを考えたといいます。
「私自身も、大学受験を控えた子どもの教育費や住宅ローンの返済で限界に近い状態です。情けない話ですが、自分の収入だけでは、母の生活を支え切る自信がありませんでした」
個人の力ではどうにもならない現実に直面し、哲也さんは病院のソーシャルワーカーに、自身の家計状況を含めた窮状を打ち明けました。そこで紹介されたのが、地域の高齢者支援の窓口である「地域包括支援センター」でした。
「そこで初めて、行政による重層的な支援制度の存在を知りました。高額療養費制度による入院費の負担軽減だけでなく、介護保険の区分変更、さらに一定の条件を満たせば利用できる自治体独自の減免措置など、多様な解決策が提示されました」
担当者は哲也さんに「家族だけで解決しようとせず、使える制度を組み合わせて、共倒れを防ぐことが先決だ」と告げたといいます。
「母は今も、私に負担をかけていると気に病んでいます。でも、役所の人に入ってもらって今後の収支を計算し直したことで、ようやく具体的にどう生活を立て直すかが見えてきました」
哲也さんは現在、退院後の母が無理なく暮らせるよう、施設への入所継続や、自宅に戻る場合の公的サービスの併用について、センターの担当者と協議を重ねています。
「電話で『元気か?』と聞くだけでは、こういう現実は絶対に見えてこない。親の『大丈夫』という言葉をそのまま信じるのではなく、しっかりと生活実態をつかまないといけませんね。そして、家族だけで抱え込むのもいけないことだと痛感しました」