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長生きとともに家族への依存が強まることも
内閣府『孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和7年実施)』によると、困ったときに頼れる人がいる場合、その相手に「家族・親族」を挙げる割合は95.3%に上ります。
特に80歳以上の女性は「友人・知人」を頼る割合が33.6%にとどまり、他者より家族を頼る傾向が顕著です。経済的な不安がなくても、配偶者との死別や身体の衰えに直面し、施設という慣れない環境に置かれた高齢者が、唯一気を許せる子どもに執着してしまうのは、深い孤独感の裏返しといえるかもしれません。
「一番堪えるのは、母からの感謝の言葉です。数時間の話し相手をして、ようやく帰ろうとすると、『やっぱり徹は優しいね。お前がいてくれて本当に良かった』と笑顔で見送られる。そう言われたらどうしようもない。本当は『母のことなんて、かまっていられない』と思っているのに、そう考えている自分が悪者に思えてくるんです」
仕事を辞めて年金生活に入ったら、妻と趣味の旅行にたくさん行こうと話していましたが、今のところ1泊2日で近場の旅行に行ったきりだといいます。静子さんは「行ってきなさい」と口では言いつつも、不在中に何度も着信を残し、施設で倒れたふりをするなどして、何とか池田さんを呼ぼうと必死になるからです。
どんなに経済的な基盤があろうとも、「家族という情愛」を盾にした依存を解決する術はありません。自立していたはずの親が、施設のなかから無意識のうちに子の人生に侵食していく――。
「母が死ぬのが先か、私が死ぬのが先か……そんな状態みたいなことを心配するようになりました。長生きがめでたいとは、心から言えない自分がいます」
池田さんは今日も、鳴り響くスマートフォンの着信に、ため息をついています。