長寿化が進むなか、親子が共に高齢期を迎えるパターンは珍しくありません。そこで気になるのが経済的困窮や老老介護ですが、お金の不安がなくても、思わずため息しか出ないという状況に追い込まれることもあります。長寿ゆえにこじれてしまった、ある親子のケースを見ていきます。
「母のことなんて、かまっていられない…」〈年金月16万円〉65歳息子が語った本音。「長寿の親」という重荷に悲鳴 (※写真はイメージです/PIXTA)

経済的に自立していた高齢の母が…

「自分も年金をもらう年齢になった。収入は額面で月16万円。正直、母のことなんて、かまっていられませんよ」

 

そう力なく笑うのは、都内在住の池田徹さん(65歳・仮名)。中堅メーカーを定年退職し、現在は月16万円の年金を受け取っています。ようやく年金をベースとした穏やかなリタイア生活を送れると思いきや、池田さんの日常は92歳になる母・静子さん(仮名)の存在によって、出口の見えない閉塞感に包まれています。

 

90代の親に60代の子ども――これだけだと、親の介護問題から続く経済的困窮や老老介護といった悩みを想像しますが、二人はそのようなものとは無縁です。亡き夫(池田さんの父)が遺した不動産に現金、月15万円の年金と、経済的な不安は一切ありません。実際に、看取り対応の高級老人ホームに入居しており、何の心配もないはずでした。

 

「本人は『金は十分にある。子どもには迷惑をかけない。時期が来たら施設に入る』と言っていたし、本当にそれを実践した。でも、体が不自由になってくると、言葉とは裏腹に執着が始まったんです」

 

厚生労働省『介護給付費等実態統計月報』などによると、年代別の人口に占める要支援・要介護認定者の割合は、70代前半で5.8%、80代前半で26.7%、90代以上だと85%程度にのぼります。静子さんも例外ではなく、現在は要介護1。しかし認知症の症状はなく意識がはっきりしています。だからこそ、事態はより複雑だといいます。

 

「施設には24時間スタッフがいて、生活に関するすべてのことをやってくれるし、手を貸してくれます。しかし、母は何かにつけて私を呼び出すんです。『テレビのリモコンの使い方がわからない』『新しいパジャマを一緒に選んでほしい』――スタッフに頼めば済むことでも、『他人には頼めない』と言い張ります」

 

週に何度も施設を通い、行けば数時間は帰ることができないのだとか。

 

「もちろん、施設に入ったからすべて人任せとは思っていません。しかし、私だって60代も後半。いつまでも子どもじゃないんですから……」