内閣府の調査によれば、多くの高齢者が「自分や家族の医療・介護費用」に不安を抱えています。老後の安心のために「年金額を増やそう」と、70歳まで働き続けたカズヨシさん(仮名・71歳)。年金の繰下げ受給により、本来よりも42%増額された〈月27万円〉の年金を手に入れました。しかし、仕事を辞めてようやく夫婦の時間を大切にしようとした矢先、悲しい現実が待っていたのです。お金のために犠牲にした〈大切なもの〉とは。
老後は安泰になるはず…「年金繰下げ受給」で〈19万円→27万円〉に増額の71歳男性。70歳まで働き続けるも「早く辞めればよかった」と後悔したワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

「これで老後は安泰になるはず」繰下げ受給で手にした〈年金月27万円〉

「どうして、あんな働き方を選んでしまったんだろうか……」

 

カズヨシさん(仮名・71歳)の1日は、妻のリョウコさん(仮名・70歳)の介護から始まります。慣れた手つきでリョウコさんの身の回りのサポートをします。しかし、その振る舞いとは裏腹に、カズヨシさんの心境は穏やかではありませんでした。

 

現在、カズヨシさんが受け取っている年金は月27万円ほど。本来は65歳から受け取る予定でしたが、70歳まで受給を繰り下げたことで、受取額が42%増額された結果です。

 

カズヨシさんは60歳で定年を迎えたあとも、再雇用制度を利用して65歳まで働くことを決めました。さらに途中で会社の制度が変わり、70歳まで働けるようになったといいます。

 

老後の資金に不安を抱えていたカズヨシさんは、「少しでも長く働いて年金を増やせば、妻との老後は安泰になるはずだ」と考え、70歳まで働き続ける決断を下しました。当時は、それが家族のための最善の選択だと信じて疑いませんでした。

 

「もし65歳で年金を受け取っていたら、月に19万円ほどでした。それが月27万円に増えるわけですから、精神的な余裕が全然違いました」

 

70歳で完全に仕事を引退して、夫婦で穏やかに暮らす。まずはこれまで支えてくれた妻への感謝を込めて、ゆっくり旅行でもしたい。そう考えていた矢先のことでした。