不動産価格の高騰が続く昨今、含み益の拡大に沸く層がいる一方で、住み替えを望みながらも身動きが取れなくなる人たちも存在します。ある夫婦の葛藤を通して、現代の住宅市場が抱える課題をみていきます。
〈世帯年収1,500万円〉40代夫婦、7年前に買った「湾岸タワマン」の査定額に歓喜も一転、ただ呆然とするしかなかった理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

住宅価格指数からみる住み替えの障壁

国土交通省が発表した『不動産価格指数(2026年3月公表分)』によれば、東京都の区分所有マンションの価格指数は、2010年を100とした場合、直近では200を大きく超えて推移しています。特に都心の利便性の高いエリアにおける上昇率は顕著です。

 

短期間で市場価格が1.5倍から2倍近くまで跳ね上がることは、決して珍しくありません。資産価値の向上は、一見すれば個人資産の増大を意味します。しかし、実需として住み替えを前提とする世帯にとって、この過熱した相場は移動を制限する要因となっているのが実情です。

 

厚生労働省『2024(令和6)年 国民生活基礎調査』によると、全世帯の平均所得金額は536.0万円。子育て世帯(児童のいる世帯)に限ると820.5万円です。岡田さん一家は、統計上、上位層に位置します。それでも、1億円を優に超える物件価格の前では、追加の借り入れという選択肢はリスクでしかありません。

 

「売っても次がない」という閉塞感。これは、利便性を手放せない共働き世帯が陥る現代の落とし穴といえるでしょう。この状況を打破するには、不動産を所有し続けるリスクを再認識し、住居に対する優先順位を明確にする必要があります。売却益を確保したうえで賃貸住宅へ移行し、資産を金融商品で運用する。あるいは、通勤圏を広げて購入価格と維持費を抑える決断が不可欠です。