毎年、誕生月に届く「ねんきん定期便」。50歳を境に、このままの収入が続くことを仮定した年金見込額が記されるようになります。一方で「毎年届いていることは知っているけれど、きちんと見たことはない」という人も多いものです。そんな、初めて「ねんきん定期便」をしっかりと見たエリート会社員のケースを通し、老後設計に潜む落とし穴と対策について考えていきます。
「何かの間違いでは…」年収1,200万円・大企業部長、妻に促され初めて見た「ねんきん定期便」の衝撃。思わず二度見する残酷な現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

高年収層を阻む壁の正体

厚生労働省の『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、民間企業に勤めていた厚生年金保険受給者の平均月額は、基礎年金を含めて15万1,142円です。65歳以上の男性における平均受給額は月額17万3,033円、女性は11万4,797円となっています。

 

また、同省の賃金統計調査を参考にすると、男性正社員の平均給与は月収で約39万円、年収で約640万円です。50代前半に限れば月収は約45万円、年収は約750万円となります。年収1,200万円を超える佐藤さんは、平均を大きく上回る水準にあります。

 

しかし、厚生年金保険料の計算基礎となる「標準報酬月額」は、現在65万円(第31級)が上限です。つまり、月収が80万円であっても100万円であっても、納める保険料と将来の年金額に反映される計算の基礎は「65万円」で頭打ちになります。

 

このため、現役時代の収入が高い人ほど「所得代替率(現役時代の収入に対する年金額の割合)」が著しく低下するという構造的な問題を抱えています。なお、この標準報酬月額の上限は、2025年の制度改正により、2027年9月から段階的に75万円へ引き上げられる予定です。

 

また、社会保障審議会年金部会の資料によれば、今後の「マクロ経済スライド」による調整で、将来的な給付水準はさらに抑制される見通しです。実質的な受給額が目減りしていく流れは、もはや既定路線といえるでしょう。

 

このような状況下では、公的年金を「生活のベース」ではなく、あくまで「補助的な収入」と捉え直す必要があります。iDeCo(個人型確定拠出年金)の活用や新NISAによる資産形成、さらには定年後の再就職による就労所得の確保が不可欠です。

 

「稼いでいるから大丈夫」という過信を捨て、50代という早い段階で「ねんきん定期便」の数字を直視すること。そして、現実的な収支計画を立てることが、老後安泰への第一歩となります。