止まらない「物価上昇」は、現役世代よりもリタイア世代に重くのしかかる課題です。資産形成がほぼ完了しており、追加の収入も見込めないリタイア世代は、「暴落時にリスクが取れない」「定期預金では実質マイナスになる」など、現役世代にはない〈3つの悪条件〉を抱えています。本稿では、企業年金制度と投資教育を専門として活動しているFPの山崎俊輔氏による著書『老後に4000万円って本当ですか? 物価が上がる時代の退職後資産の考え方』(日経BP・日本経済新聞出版)より一部抜粋・再編集し、リタイア世代にとっての「老後4,000万円問題」の厳しさと、その現実について解説します。
年金生活に入る「リタイア世代」が直面する〈老後4,000万円〉問題…現役世代にはない〈3つの悪条件〉【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

【悪条件3】「定期預金で安全に」の落とし穴…実質価値での“元本割れ”リスク

リタイア後の運用条件を整理すると「じゃあ、投資はやめて定期預金で安全に」となるわけですが、こちらも「老後4000万円」の見地からは厳しい投資条件となります。

 

「老後4000万円」で私が指摘しているのは物価上昇に伴い、将来必要な資産額も増大していくということです。少なくとも「保有資産の収益率=物価上昇率」としていくことが必要です。物価上昇率を下回るということは実質マイナスの状態です。

 

銀行の定期預金は「安全」「確実」ですが「低利回り」です。しかもこの低利回りは物価上昇率を下回り続けています。

 

2022年、23年は年0.05%のマイナス金利時代でした。24年に年0.12%と上昇したものの、この3年間の物価上昇率は22年2.5%、23年3.2%、24年が2.7%ですから、確実に「実質マイナス」の状態が続いています。

 

2025年に入って、「100万円までなら年利1.0%」のように1%を上回る金利提示もあらわれていますが、残念ながら3.2%の物価上昇率を上回るほどではありませんでしたし、預入額の制限があるのが一般的です。

 

リタイア生活に入ったのですからリスクを取らないというのは合理的な判断のはずが、別のリスク、すなわち「実質価値での元本割れリスク」を負うことになってしまうのです。

 

これも、数年くらいの老後であれば問題となりませんが、20年あるいは30年という長い老後を意識すると目減り幅が大きくなってしまいます。

 

 

山崎 俊輔

フィナンシャル・ウィズダム代表

ファイナンシャルプランナー、消費生活アドバイザー