止まらない「物価上昇」は、現役世代よりもリタイア世代に重くのしかかる課題です。資産形成がほぼ完了しており、追加の収入も見込めないリタイア世代は、「暴落時にリスクが取れない」「定期預金では実質マイナスになる」など、現役世代にはない〈3つの悪条件〉を抱えています。本稿では、企業年金制度と投資教育を専門として活動しているFPの山崎俊輔氏による著書『老後に4000万円って本当ですか? 物価が上がる時代の退職後資産の考え方』(日経BP・日本経済新聞出版)より一部抜粋・再編集し、リタイア世代にとっての「老後4,000万円問題」の厳しさと、その現実について解説します。
年金生活に入る「リタイア世代」が直面する〈老後4,000万円〉問題…現役世代にはない〈3つの悪条件〉【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

【悪条件2】退職数年で「財産を半減」させる人も…リタイア世代は暴落の回復を待てない

もうひとつの厳しい投資条件として、「長期投資」のメリットを活かせないことがあります。

 

若い世代に長期投資が推奨されるのは時間を待つ余裕があるからです。たとえばリーマンショッククラスの暴落が生じても、5年ほど積立投資を続けると相場は回復、むしろ安値仕込みの好機を得たことになり、資産の成長に寄与しました。

 

しかし、リタイア後にこうした余裕を持つことは困難です。60歳ならまだ5年待てるかもしれませんが、70歳での暴落で5年待つことは心理的に厳しく、市場回復を待たずに損失確定してしまうかもしれません。

 

出典:『老後に4000万円って本当ですか? 物価が上がる時代の退職後資産の考え方』(日経BP・日本経済新聞出版)より抜粋
[図表]リタイア世代の難しさとは? 出典:『老後に4000万円って本当ですか? 物価が上がる時代の退職後資産の考え方』(日経BP・日本経済新聞出版)より抜粋

 

リーマンショックの頃には、団塊世代が定年退職を迎えており、退職金で投資をした人も少なくありませんでした。ところが市場が暴落、短期的には半値になるような値下がりも起きます。

 

このとき、パニックになって売ってしまった人は、退職数年で財産を半減させてしまい、その後のリタイア生活に暗い影を落としました。

 

経済の回復を待てた人は、新規の購入を行わなかったとしても、およそ5年で回復に転じました。しかし、その時間的余裕は、高齢者には厳しいものがあります。

 

一般に年齢の高さに伴い、運用で取れるリスクは低くなるとされます。最終的な判断は個人によりますが、高いリスクを取った相場下落に対する時間的余裕を持ちにくいことは事実です。

 

物価上昇を上回ろうとすれば期待リターンを高める必要があり、そのためにはリスクを高く取りたいわけですが、高齢期にはそれが難しくなるのです。