昨今、年金だけでは生活が立ちゆかず、ひそかに困窮する高齢者が増えています。特に、子どもに心配をかけたくないという親の自尊心が、事態を深刻化させるケースは少なくありません。突如として親の生活破綻に直面したある家族を通し、高齢者世帯が抱える「隠れた貧困」の実態と対策をみていきます。
「母の日なんて、祝っている場合じゃなかった…」深夜2時の緊急電話。〈年金月11万円〉82歳母がひた隠しにしていた〈預金残高〉に52歳長男が絶句 (※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者世帯の半数は「生活苦」の現実

厚生労働省『2024(令和6)年 国民生活基礎調査』で世帯主の年齢階級別に人員1人当たり平均所得金額を見ていくと、50代が312.6万円でピークに達し、60代では273.6万円、70代以上では194.3万円と、全世代で断トツに低くなります。給与がなくなり、収入は年金だけとなる人も多くなる高齢者。その生活ぶりは厳しいものがあります。

 

生活意識については、高齢者世帯の4分の1にあたる25.2%が「大変苦しい」と回答。「やや苦しい」と答えた層も合わせると55.8%に達し、高齢者世帯の半数以上が生活苦に直面しています。

 

老後の蓄えも、全員が万全というわけではありません。金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査(2025年)』によると、70歳以上の二人以上世帯で「金融資産を保有していない」層が10.9%。10世帯に1世帯は蓄えがなく、その日暮らしのような生活を送っています。

 

さらに、このような状況であっても、子どもや家族には迷惑をかけたくないというプライドが壁となります。「大丈夫?」という問いかけに対して、実情を打ち明ける行為は、自尊心を削る行為なのかもしれません。結局、限界を迎えてから事実を知る――という最悪のケースに至ることもあるでしょう。

 

親の「大丈夫」を言葉通りに受け取るのは危険です。手遅れになる前に、公的な支援制度を確認し、家計の現状を共有することが重要です。プライドを守ることよりも、生活を破綻させないための現実的な対話が求められます。