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「少しは多めに払ってよ…」結婚前に芽生えた〈どす黒い感情〉
しかし、ショウさんには「貯金より投資のほうが絶対にいいのに、やらないのは賢くない」といわれ、見下されているように感じるというカオリさん。
ショウさんの無神経な態度に触れるうちに、カオリさんの心のなかには、これまで感じたことのない「どす黒い感情」が湧き上がるようになりました。
「私のほうが年上で収入も少しだけ多いので、デート代はきっちり割り勘にしています。でも、実家暮らしで投資に回すお金があるなら多めに払ってくれてもいいのにって、意地汚いことを考えるようになってしまいました」
一人暮らしで将来の生活防衛資金を必死に貯めようとするカオリさんと、実家暮らしの余裕から投資効率ばかりを気にするショウさん。結婚を控えた二人ですが、前提となる生活環境の違いから生じた金銭感覚のズレは、お互いの信頼関係にまで悪影響を及ぼしそうです。
拡大する「投資ブーム」と、見落とされがちな「実家暮らし」の環境格差
ショウさんが投資に目覚めた背景には、社会全体での投資機運の高まりが関係しているといえそうです。金融庁の「NISAの利用状況の推移」によると、NISAの口座数は令和6年12月の約2,558万口座から、令和7年12月には約2,825万口座へと増加しており、買付額に至っても約52.6兆円から約71.4兆円へと急速な拡大を見せていることが読み取れます。将来への備えとして投資に取り組むこと自体は、決して間違った選択ではないと推測されます。
しかし、投資の原資となる「余剰資金」の背景には、個人の生活環境の差が大きく影響していることを見落としてはなりません。総務省の「家計調査報告(令和7年)」によると、単身世帯における1ヵ月あたりの消費支出は平均で約17.3万円に上ります。
家賃や食費などを全額自分で負担し、経済的自立を果たしているカオリさんと、実家に月3万円しか入れず、実質的に親から住居費や食費の大部分を負担してもらっているショウさんとでは、「投資に回せる余裕資金」に埋めがたい差があることは容易に推測されます。
さらに、内閣府の「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」によれば、現在の収入源として「子や親族からの援助」を受けている高齢者は全体のわずか2.4%にとどまっています。カオリさんのように、一人暮らしの限られた予算の中から親へ毎月2万円の仕送りを続けている姿勢は、データから見ても自立した立派な行動であるといえるでしょう。
このような環境格差に伴う金銭感覚のズレを結婚前に認識できたことを機に、お互いの「自立の度合い」や「現金と投資のバランス」について冷静に話し合い、歩み寄るステップが必要であることを、これらのデータは示唆しているといえそうです。
[参考資料]
金融庁「NISAの利用状況の推移(令和7年12月末時点・速報値)」
総務省「家計調査報告(令和7年)」
内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」