人、それぞれが負わされる“見えない役割”。それが人生の足枷となることがあります。ある男性の葛藤から、家族の支援・介護を一身に背負う「ケアラー」の孤立と、公的制度の重要性を考えます。
ふざけるな!俺の人生、なんだったんだ…〈年収680万円〉52歳独身長男、〈年金月10万円〉82歳母の眠る姿を前に号泣。絶望の同居生活の結末 (※写真はイメージです/PIXTA)

家族の介護に、結婚も諦めた50代の長男の涙

東京都内のメーカーに勤務する佐藤健一さん(52歳・仮名)。年収680万円。一見すれば、安定した生活を送る独身男性です。しかし、その内実は、82歳になる母・芳江さん(仮名)の在宅介護と、障害があり施設に入所している弟の支援に追われる日々だといいます。

 

「ずっと、家族のために生きてきた……そんな感覚です」

 

常に家族を優先してきた佐藤さんですが、それが特別なことであると気づかされたのは、30代を目前にしたころでした。当時、結婚を考えていた女性がいましたが、父親が急逝。知的障害を持つ弟の将来と、一人残された母を支えるのは「長男である自分しかいない」と周囲からも期待され、自らも疑いなくそう考えていました。

 

しかし、彼女からは「嫁ぎ先としては重すぎる」と告げられ、結婚の話は立ち消えとなります。以来、一度も浮いた話はありません。


「彼女から家族を理由に断られたときは、大きなショックでした。それ以来、自分が置かれた境遇は特殊なのだと思うようになりました」

 

現在は、認知症が進行した母と2人暮らしです。朝5時に起き、母の着替えや食事の介助を済ませてから出社。仕事中も、徘徊やトラブルがないか見守りカメラをチェックする毎日が続いています。

 

「先日、深夜にふと目が覚めて、隣で寝ている母の顔を見たんです。穏やかな寝顔でした。でも、その瞬間に猛烈な感情がこみ上げてきました。『こんなに気持ちよさそうに寝て……ふざけるな。俺の人生、いったい何だったんだ』と。母が憎いわけではない。誰かが悪いわけでもない。しかし、何のために生きているのかがわからなくなり、ただ泣かずにはいられなかったんです」

 

母の介護が終わったとしても、施設に入所する弟の支援が続く。この消えない不安はこれからもずっと続いていく――。そう思うと、絶望しかないといいます。

 

 

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