「無償化」と聞くと、教育費の負担がなくなるように感じるかもしれません。しかし実際には、その言葉の印象と現実のあいだに少なからずギャップがあるようです。東京都の高校無償化にあやかろうとした40代共働き夫婦の事例をもとに、高校無償化の仕組みと注意点をみていきましょう。※個人の特定を避けるため、登場人物の情報は一部変更しています。
「こんなはずじゃなかった」高校無償化…授業料ゼロでも家計は苦しい、世帯年収700万円・40代共働き夫婦の誤算【CFPが警鐘】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「高校無償化」の落とし穴

高等学校等の授業料支援制度には、国の「高等学校等就学支援制度」と都道府県独自の制度があります。

 

2025年度、国の「高等学校等就学支援金制度」は私立・公立問わず所得制限を撤廃し、一律11万8,800円が支給されることとなりました。

 

また、東京都には独自の「私立高等学校等授業料軽減補助金」制度があります。これは、国の就学支援金と合わせて、都内私立高校平均授業料が上限となり、最大49万円支給されるというものです。

 

文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」によると、高校における学習費の総額は、私立に進学した場合、年間で117万9,261円となっています。

 

[図表]学校種別の学習費総額 出典:文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」より筆者作成
[図表]学校種別の学習費総額
出典:文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」より筆者作成

 

学校教育費とは学校内でかかる費用で、入学金や授業料、施設費、制服やバッグなど指定品、修学旅行費などです。一方で学校外活動費は、学習塾や習い事など、学校教育費以外の活動に支出する費用を指します。

 

つまり、最大49万円の支給は、学校教育費の一部に充当されるにすぎないのです。

 

また、子どもにかかる費用は教育費だけではありません。交際費や交通費などについても、子どもの成長とともに自然と広がっていきます。

 

カズキさんの長女も、都内の高校に通うようになって交際範囲が広がりました。都心に遊びに行くことも増え、「お小遣いが足りない」と不満げです。

 

今年、長女の学年は海外への修学旅行が予定されています。50万円以上かかる見込みとのことで、夫婦は頭を抱えていました。

 

カズキさんが抱いた違和感の正体

カズキさんが抱いた違和感は、この制度と現実のギャップでした。

 

無償化と聞くと、「最初からお金がかからない状態」をイメージするかもしれません。しかし、実際は「あとから一部だけが戻ってくる仕組み」です。

 

この違いは大きく、キャッシュフローに余裕がなければ、その恩恵を受けにくいともいえます。

 

家賃も上がり、無償化のはずが長女に関する支出も増えました。カズキさんは、家計も見直しましたが、限界があります。それより、「私ももっと働くから」といっていた妻が一向に動かないことについにしびれを切らしました。

 

「都内に引っ越したいといったのは君だろう」