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母・子3人でわける場合の引き出し上限額
今回の由美さんのケースで計算してみましょう。相続人は、母・和子さんと、由美さんを含む子ども3人の計4人です。法定相続分は、母親が1/2、子どもたちは1/2を3人でわけるので、一人につき「1/6」となります。長女である由美さんが窓口で払い戻せる金額は、
と、「遺産分割前の払い戻し制度」の話を行員から聞きました。葬儀代120万円に対し、引き出せるのはわずか8万3,000円。仮に、母親と兄弟がそれぞれ申請を行ったとしても、合計約50万円しか引き出すことができないことになります。行員からこの制度の説明を聞いた由美さんは、仕方なく8万3,000円だけ引き出して重い足取りで帰宅するしかありませんでした。
この制度で上限の150万円を受け取るには、単純計算で2,700万円もの預金残高が必要になるのです。
いざというときに「使えるお金」をどう準備するか
現在は「遺産分割前の払い戻し制度」により、相続人単独での引き出しも可能になりましたが、由美さんの事例のように、相続人が多い場合や残高によっては、一人が引き出せる金額は少額になることも少なくありません。葬儀費用や遺された家族の生活費を考える場合、生命保険で準備することが望ましいといえます。
生命保険は、請求をして不備がなければ5営業日以内に支払いするというルールです。なかには、請求したその日に支払いをする生命保険会社も。預貯金と異なり、「受取人固有の財産」とみなされるため、遺産分割協議を待たずに受取人が単独での請求が可能です。
また、生活費の準備としては、収入保障保険を検討することも一手です。年金のように毎月決まった額の保険金が支払われるため、一時金で大金を受け取って無駄遣いなどで散財してしまうリスクを避け、生活費の不足分の足しにすることができます。
「遺産分割前の払い戻し制度」を利用して、預金を引き出す場合は、以下の書類が必要になります。
〇被相続人(故人)の除籍謄本
〇相続人全員の戸籍謄本(または全部事項証明書)
〇払い戻しを希望する人の印鑑証明書
ただし、金融機関によっては手続き方法や必要書類が変わることもあるため、事前に確認しておきましょう。
「銀行にお金があるから大丈夫」という思い込みが、いざというときの落とし穴になることもあります。家族が最期を見送ったあとの生活を穏やかに過ごせるよう、いま一度「出口の備え」を点検してみてはいかがでしょうか。
吉野 裕一
FP事務所MoneySmith
代表