(※写真はイメージです/PIXTA)
年金19万円、貯金2,100万円…恵まれているはずの老後に差した影
京子さんは、現役時代に事務職として勤め上げ、自身の厚生年金と、亡き夫の遺族年金を合わせて月額19万円を受給しています。さらに、夫の生命保険金と現役時代からの蓄えを合わせ、口座には2,100万円ほどの貯金がありました。
このお金は、彼女にとって贅沢をするための資金ではなく、病気や介護が必要になったときに息子夫婦に迷惑をかけないための、いわば自律の証でした。しかし、その安心感が皮肉にも、息子一家との関係に微かな歪みを生じさせていきます。
「母さんは余裕があるから」…言葉の端々に透ける期待
息子一家が遊びに来るたび、京子さんは孫の喜ぶ顔が見たくて、数万円のお小遣いや入学祝い、レジャー費を惜しみなく手渡してきました。しかし、ある時期から、会話の中に妙な「重み」が混じるようになります。
「周りの子はみんな個別指導塾に通わせてるみたいで。月謝が上がっちゃって、うちもやりくりがちょっとね……」
「〇〇(孫)が、おばあちゃんと一緒なら高いほうのお店に行けるかな、なんて言っちゃって」
「いまの住宅ローン金利だと、繰上げ返済も難しくて」
「周りのお友達はみんな海外研修付きの夏期講習に行くみたいで、うちは肩身が狭いんです」
最初は「困っているなら力になりたい」という純粋な親心でした。しかし、同様のやりとりが繰り返されるうち、京子さんの心に小さな棘が刺さります。こちらが「大変ね」と共感するだけでは満足せず、次の言葉を待たれているような、あの独特の間。
「息子も嫁も、私を思ってきてくれている」そう自分に言い聞かせながらも、お金を渡した直後の明るい声と、渡さないときのどことなく所在なさげな空気の差を、京子さんは見逃せませんでした。
