(※写真はイメージです/PIXTA)
「もうここには住めないよ」豹変した親族と失った終の棲家
「これで安心だね、伯母さん」。 そう言って優しく微笑みながら、甥の和夫さん(仮名・53歳)が差し出した書類に、佐藤照子さん(仮名・82歳)は迷わず印鑑を押しました。
長年連れ添った夫に先立たれ、子どものいない照子さんにとって、頻繁に顔を出してくれる甥は唯一の頼みの綱でした。 都内近郊にある庭付きの一戸建て。住み慣れたこの家を和夫さんの名義に変更し、養子縁組を交わせば、最期までこの場所で暮らせる――。 そう信じて疑わなかった照子さんの日常は、登記が完了したわずか1ヵ月後、音を立てて崩れ去ることになります。
名義変更の手続きが終わった直後から、和夫さんの態度は目に見えて冷淡になりました。 それまで週に一度は届けてくれていた惣菜は途絶え、電話をかけても「仕事が忙しい」と一方的に切られる日々が続きます。 そしてある日の午後、和夫さんは数冊のパンフレットを手に、突然照子さんの元を訪れました。
「この家、維持費がかかりすぎるよ。売却の手続きを進めることにしたから、伯母さんは来週からこっちの施設に入引っ越そう」
困惑し、震える声で「ここで最期まで面倒を見てくれる約束だったじゃない」と訴える照子さんに対し、和夫さんは「そんなの口約束でしょ。この家はもう僕のものなんだから。この家を維持するお金なんて、僕は持っていないよ」と冷ややかに言い放ちました。
抵抗する間もなく、照子さんは身の回りのわずかな荷物だけをまとめられ、郊外の介護施設へと入所させられました。 入所費用や月々の利用料は、照子さんの年金と蓄えから支払われる仕組みになっていました。 あの日以来、和夫さんが施設を訪れたことは一度もありません。 窓から見える見知らぬ景色を眺めながら、照子さんは「善意を信じすぎた自分が馬鹿だった」と、力なく肩を落とします。
~でした。
