長年、会社員として真面目に働き、ようやく迎えた年金生活。事前の試算では十分な受給額を確保していたはずでも、実際に口座へ振り込まれた金額を見て、言葉をなくす受給者が後を絶ちません。 現役時代には見えにくかった「引かれるお金」が、リタイア後にはより鮮明になります。老後の資金計画を立てる際、多くの人が見落としがちな「年金手取り額」の現実と、その背景をみていきます。
「年金月20万円のはずが…」通帳の振込額を見て絶句。65歳元サラリーマンを襲った「年金手取り額」厳しい現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

期待していた「月20万円」の現実

都内の精密機器メーカーで長年、エンジニアとして勤務してきた岡田和男さん(65歳・仮名)が、年金の真実に触れたのは定年を目前に控えた62歳のときでした。仕事帰りに立ち寄った居酒屋で、2歳上の元同僚がこぼした愚痴がきっかけです。

 

「『やっと受給が始まったと思ったら、ごっそり持っていかれる。年金にまで税金や保険料をかけるなんて、二重取りじゃないか』と、その先輩は非常に憤慨していました。私は驚いて、『えっ、年金にも税金がかかるのか?』と聞き返してしまいました」

 

それまで岡田さんは、ねんきん定期便に記載された「20万円」という数字を、そのまま生活費として計算していました。慌てて自宅に戻り、老後の資金シミュレーションをやり直したといいます。

 

「先輩の言葉を聞いてから、自分なりに調べました。所得税や住民税がかかることは知識として入れ、自分なりに『月1~2万円くらいは引かれるだろう』と予測し、予算を組み直したんです。準備は万全だと思っていました」

 

そして迎えた、65歳の最初の年金振込日。銀行のATMで記帳した岡田さんは、印字された数字を見て、しばらくその場を動けなくなりました。

 

「やはり所得税などが引かれていました。額面で知らされていた金額から天引きされているのは、わかってはいてもショックでしたね。ちょうど初任給をもらったときの感覚に近いです」

 

岡田さんが感じたのは、想定していた税金以上に重い「社会保険料」の負担でした。

 

「しばらくは、住民税や介護保険料、国民健康保険料は自分で納付しなければなりません。そのうち、これらもすべて天引きされるようになります。仕事を辞めても、預金通帳を見てため息をつくのは一生続くのですね」

 

岡田さんは、力なくこう付け加えました。

 

「ねんきん定期便などの書類に、大きく赤字で『これは額面であり、実際の手取り額ではありません』と注意書きをすべきですよ。私は事前に知ることができましたが、振り込まれて初めて税金などが引かれることを知ったら、老後の計画が破綻してしまいます」