(※写真はイメージです/PIXTA)
高齢者の「自立志向」の限界
国立社会保障・人口問題研究所『第9回世帯動態調査(2024年社会保障・人口問題基本調査)』によると、20歳以上の子を持つ親のうち、同居子がいる割合は46.9%であり、前回調査の51.2%から4.3ポイント低下しました。特に、身体が健康であるうちは同居を回避し、自立を志向する傾向が強いことが見て取れます。
しかし、その「自立」が限界を迎えるタイミングが、統計上の数値として顕著に表れています。調査結果では、18歳以上の子との同居割合は70代から80代前半にかけて最低となりますが、85歳以上になると上昇に転じることが示されました。具体的には、85歳以上の男性では45.4%、女性では55.8%が子と同居しています。
ここで注目すべきは、同居に至る経緯です。85歳以上の女性の場合、4人に1人以上(27.5%)が、一度は親元を離れて別世帯で暮らしていた子が再び親と同居する「再同居」という形態をとっています。つまり、当初は別居を維持していても、最終的には健康状態の変化等によって同居を選択せざるを得ない現実があるのです。
実際、介助・介護が必要な高齢者ほど、離家経験のある子と再同居している割合が高いこともデータで裏付けられています。65歳以上の要介護者において、同居子に離家経験がある割合は男性で55.5%、女性で60.7%に達しており、介護不要な者と比べて約8ポイント高くなっています。
事例の美香さんが抱いた「もっと早く話し合っておけばよかった」という後悔は、この緊急避難的な再同居への移行に起因すると考えられます。良好なコミュニケーションが可能な時期を、互いへの遠慮から別居のまま過ごし、日常生活に手助けが必要な状態になってから生活を共にする――という構図です。
「親に迷惑をかけたくない」「親の自立を尊重したい」と互いを思いやって保ってきた距離が、いざ介護が必要になった段階では、かえってスムーズな協力や意思疎通を阻む壁になってしまうことがあります。
こうした事態を防ぐためには、親が心身ともに健康なうちから、将来の介護や住まいについて具体的な合意形成をしておくことが重要です。85歳前後で生活環境が激変する可能性が高いことを前提に、「いつまで別居を続けるか」「どの程度の不自由が生じたら同居や施設の検討を始めるか」という基準を共有しておくとスムーズです。
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