(※写真はイメージです/PIXTA)
「お金はある、でも歩けない」…10年後に突きつけられた現実
変化が起きたのは、佐藤さんが75歳になったころ。膝の痛みが悪化し、自力で長距離を歩くことが困難になったのです。
「先日、ふと通帳を記帳したら、2,500万円の残高はほとんど変わっていませんでした。それを見た瞬間、急に足元から崩れ落ちるような感覚に陥り、自宅の玄関先で声を上げて泣いてしまいました。10年前なら、このお金を使って夫婦の思い出を辿ることもできました。でも、今の私には旅行を楽しむ体力もありません。食が細くなって、豪華な食事を存分に楽しむこともできない。将来のためにと思って100円、200円を惜しみ続けてきましたが、結局、何のために我慢していたのか、わからなくなってしまって……」
前出の調査では、必要な金融資産額として「2,000万円以上」と回答する人は32.5%で、全体の約3人に1人にのぼります。佐藤さんはその目標を維持しながらも、生活の満足度は非常に低い状態だったのです。また「将来的な財産の使い道」を尋ねる設問では、子どもに資産を残したいと考える人が47.4%と約半数にのぼりました。一方、佐藤さんの娘さんはこう話したといいます。
「お母さん、お金を遺してくれるのはありがたいけど、そんなに切り詰めて生活してほしくなかった。今からでも遅くないんじゃない?」
娘の言葉を受け、佐藤さんはようやく生活の見直しを始めました。「備え」は重要です。しかし、将来への不安から過剰な節約を続け、現在の時間を失ってしまうことは、高齢期における最大のリスクといえるでしょう。大切なのは、資産を「万一の備え」と「今を楽しむ予算」に明確に分けること。また早いうちに家族と相続についても意向を確認しておくことも重要です。「残してほしい」より「使ってほしい」という家族の本音を知ることで、自分自身のために一歩を踏み出せるようになります。
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