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「1円も減らしてはいけない」夫の死後に設定した、厳しい生活ルール
「主人が亡くなって一人になったとき、真っ先に思ったのは『これから先、どれだけお金がかかるか予測がつかない』ということでした。とにかく今ある貯金を1円も減らさないようにしよう。将来への不安から、そう決めたんです」
佐藤恵子さん(75歳・仮名)は、10年前の状況をそう振り返ります。夫の正一さん(享年65)が急逝し、残された預貯金は約2,500万円。佐藤さんは、このお金を「将来の介護や病気のためだけの資金」と位置づけ、日々の生活は自分の年金内だけでやりくりすることを自身に課しました。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果』によると、「老後の備え」について85.5%の人が「公的年金」を最大の備えとして挙げています。佐藤さんの年金は月約15万円。そこからマンションの管理費、固定資産税、社会保険料を支払うと、手元に残る生活費はわずかでした。
「冬は暖房の設定温度を下げ、厚着で過ごしました。スーパーでは、10円でも安い食材を求めて遠くまで歩きました。夫が残してくれた2,500万円があるからこそ、安心して生きていける。だから絶対に手を付けてはいけない――そう信じて疑わなかったのです」
佐藤さんのように、客観的には十分な資産を持ちながら、心理的に困窮している高齢者は少なくありません。同調査で「貯蓄は十分か」という問いに対し、全体で「足りない(どちらかといえば含む)」と回答した層は33.2%。注目すべきは、その不安の正体です。「今後の生活のなかで準備しているもの」として、多くの人が「病気・介護への備え」を挙げています。
「いつか体が動かなくなったとき、子どもに金銭的な負担をかけたくない。そのためには、今、外食をするのは贅沢だと思っていました。主人が生きていたときは『老後はのんびり旅行にでも』と話していましたが、一人になってしまいましたし、『今はまだ、その時ではない』と先延ばしにしているうちに、10年が過ぎてしまいました」
佐藤さんは、10年間にわたり一度も預金を取り崩すことなく、自身の趣味や娯楽をすべて切り捨てて生活してきたそうです。
