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地方移住の幸福度を分ける「地域コミュニティ」
総務省『令和5年住宅・土地統計調査』によると、全国の空き家数は900万戸を超え、過去最多を更新しました。特に「賃貸・売却用以外(放置された空き家)」は385万戸にのぼり、この20年で約1.8倍に膨れ上がっています。
さらに、この空き家問題に拍車をかけるのが「農地の維持」という高いハードルです。農林水産省の『2020年農林業センサス』によれば、全国の耕作放棄地面積は約42.3万ヘクタール。これは滋賀県の総面積(約40万ヘクタール)を上回る広大な土地が、誰の手にも負えず放置されていることを意味します。
佐藤さんの場合、この「空き家」と「耕作放棄地」という二大課題を、相続によって同時に引き受けてしまった形でした。1反という広さは、都市部での「庭いじり」の延長線上で管理できる規模ではありませんでした。こうした絶望的な状況を打破する鍵となったのが、移住者が敬遠しがちな「地域コミュニティ」の存在でした。
内閣官房による『東京圏在住者の移住に関する意識調査』を紐解くと、移住への懸念事項として「地域コミュニティへの馴染み」が常に上位に挙げられます。しかし、同調査の分析では、移住先での生活満足度を引き上げる最大の要因もまた「地域住民との交流」であることが示されています。
佐藤さんのケースでは、自分一人で広大な土地を囲い込み、義務感だけで維持しようとすれば、それは単なる負債でしかなかったでしょう。しかし、土地を地域に開き、コミュニティの一部として機能させることで、管理の負担は交流の場に転換されました。
移住のハードルそのものといえる地域コミュニティ。一方で移住先での暮らしを支え、後悔を喜びに変えるセーフティネットになることもあるようです。