親には十分な蓄えがあるから、老後の備えは大丈夫――。しかし、たとえ通帳に十分な数字が並んでいたとしても、そうとは限りません。ある親子のケースから、高齢期の資産管理に潜む落とし穴と、今すぐ確認しておくべき「資産の即応性」についてみていきます。
預金残高「2,000万円」あっても払えない…実家のリフォームで発覚した、70歳母「使えるお金は112万円」の衝撃事実 (※写真はイメージです/PIXTA)

「お金はあるけど払えない」の正体

久美子さんのケースのように、「資産はあるのに、すぐには支払いに使えない」という状況は珍しいものではありません。

 

金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査(2025年)』によると、単身者の金融資産保有額は平均1,329万円(金融資産保有世帯に限る)。そのうち約4割は預貯金で、さらにそのなかの約2割弱は定期性預貯金となっています。

 

【単身者の保有金融資産…主な金融商品と保有額】

金融資産保有額:1,329万円

・預貯金…539万円

(うち定期性預貯金…262万円)

・株式…269万円

・投資信託…187万円

・生命保険…129万円

・個人年金保険…81万円

 

「とりあえず定期に入れておけば安心」という旧来の習慣が、現代では「資金の即応性」を奪う結果となっています。普通預金であればキャッシュカードで引き出しが可能ですが、まとまった額の定期預金は、原則として窓口での解約手続きを要します。大輔さんは「持っているはずのお金に、すぐには手が届かない」という高い壁に直面したわけです。

 

このような状況を回避するためにも、元気なうちからの「資産の整理」が不可欠です。

 

まず「“使うお金”と“遺すお金”を分けること」。たとえば数年以内に予定しているリフォーム費用や、予備の生活費などは、解約の手間がない普通預金へ移しておきます。そして「金融機関の代理人指名制度を活用」。認知症などで本人が窓口に行けなくなる前に、あらかじめ家族を代理人として登録しておけば、一定の範囲内で引き出しが可能になります。さらに「1行1,000万円のルールを徹底」。ペイオフ対策として、一つの銀行に資産を集中させず、複数の金融機関に分散させます。

 

「親にお金のことを聞くのは気が引ける」という子世代も多いでしょう。しかし、大輔さんのようにリフォームや介護という具体的なイベントが動き出してからでは、対応が後手に回ってしまいます。まずは話をすること。それが親の老後と子世代の生活を守る第一歩となります。