(※写真はイメージです/PIXTA)
更新時に初めて見えた「条件の変化」
都内の賃貸マンションに住む山本正一さん(79歳・仮名)は、同じ物件に30年以上暮らしてきました。現役時代から住み続け、定年後も月17万円の年金をベースに生活しています。「長年住んでいるから愛着もある。ここを出るつもりはなかった」と正一さんは話します。
転機となったのは、軽い肺炎で約2週間ほど入院したことでした。幸い大事には至らず、退院後の生活自体に大きな支障はありません。
「医師からも『無理をしなければ大丈夫』と言われていたので、元の生活に戻れると思っていました」
そう話すのは、長女の山本恵さん(50歳・仮名)です。恵さんは都内で働いており、正一さんとは月に数回会って状況を確認してきました。変化が表れたのは、ちょうどそのタイミングで届いた契約更新の案内でした。
「これまでは更新料を払って書類を返送するだけだったんですが、今回は別紙が付いていました」
そこには、緊急連絡先の再確認や、単身高齢者向けの見守りサービスの案内が記載されていました。恵さんは当初、「最近はこういうものなのかな」と受け止めていたそうです。しかし、管理会社に問い合わせた際、説明の内容に違和感を覚えました。
「高齢の単身入居者については、万が一の対応体制を確認させていただいている、という説明でした」
その流れで入院していたことを伝えたところ、「見守りサービスの導入や、連帯保証人の再設定についても検討を」と、話はより具体的な内容に進みます。30年以上、同じ条件で住み続けてきた住まい。恵さんは戸惑いを隠せませんでした。
「今まで一度も言われたことがなかったので、『急に何が変わったのか』という感覚でした。このまま父は追い出されるのではないか、とさえ思いましたね」
一方、管理会社側の説明は「単身高齢者の入居が増えているなか、万が一の際の対応や発見の遅れによるリスクが課題になっている」と一貫していたといいます。提示された見守りサービスは民間事業者のもので、月額数千円の費用が発生します。山本さんの年金収入からすれば、決して小さくない負担です。
「父は『そこまでしなくても生活できる』と言っていました。ただ、何かあったときのことを考えると、家族としては迷いもありました」
最終的に、契約更新自体は可能とされましたが、従来と同じ条件ではありませんでした。見守り体制の整備と連絡先の強化が前提となる、いわば「条件付き更新」です。
「更新できないわけではない。でも、『これまで通りではいられない』と感じました。父の今後のことをきちんと決めていかないといけない、と考えるきっかけになりました」
恵さんは当時をそう振り返ります。