「お父さん、本当にお疲れさまでした」―75歳で静かに眠るように息を引き取った刈谷幸司さん(仮名)。30年間コツコツと積み立てた株式投資で、毎月20万円の配当収入を得ながら優雅な老後を過ごしていました。しかし、息子の一郎さん(仮名)が相続で受け取ったのは、予想をはるかに上回る「重すぎる贈り物」でした。資産形成の成功が、なぜ家族に重い負担をもたらすことになったのでしょうか。事前に打つ手はなかったのか、FPの青山創星氏と一緒に考えてみましょう。
毎月20万円の配当金で優雅な老後を送った父、逝去。48歳息子〈時価1.2億円の株〉を相続するも、「とんでもない置き土産」に顔面蒼白【FPの助言】
成功した資産形成を次世代に確実に引き継ぐために
刈谷家の事例から学べる重要なポイントは以下の通りです。
●「増やす力」と「届ける力」は別物
どれほど見事に資産を築いても、相続対策が伴わなければ、その資産は家族の重荷に変わりかねません。
● 相続税は「現金」で払うもの
株式や不動産がいくらあっても、納税の原資となる現金がなければ、不利なタイミングでの売却を迫られます。
●市場は納税期限を待ってくれない
相続発生と市場の暴落が重なれば、大切に育てた資産を安値で手放すことになりかねません。
●「今いくら相続税がかかるか」を知っておく
生前から定期的に相続税額を試算し、必要な現金を手元に確保しておくことが、家族を守る第一歩です。
●「出口戦略」まで含めてこそ、本当の資産設計
資産を「築く」ことだけでなく、「届ける」ところまで描いてはじめて、長期戦略は完成します。
「自分の資産も、ほとんどが株式。同じようなことになるかもしれない」と感じた人もいるかもしれません。長い年月をかけてコツコツと資産を積み上げてきたこと、それ自体は本当に素晴らしいことです。家族を想い、将来に備えてきたからこそ、今の資産があるのだと思います。
ただ、せっかくの想いが届く前に、税金や市場環境という「制度の壁」に阻まれてしまうことがある――刈谷家の事例は、そのことを私たちに教えてくれています。
「資産を増やすこと」と「資産を届けること」は、似ているようでまったく別のことです。優秀な投資家ほど「売らない」ことに誇りを持っていらっしゃいます。その信念は尊いものです。しかし、ある段階からは、家族が困らないように現金を備えておくこともまた、大切な人への深い愛情の形ではないでしょうか。
今日からできることは、決して難しいことではありません。
「もし今、自分に何かあったら、相続税はいくらになるだろう?」
「家族はそれを払えるだろうか?」
この問いを一度、静かに考えてみること。それだけで、あなたの資産設計は一段深いものになるはずです。築いてきた大切な資産が、家族のもとへ確かに届くように。その「最後の一手」を、今から考えてみませんか。
ファイナンシャルプランナー
青山創星