もし現金があったら―相続対策で見落としがちな「流動性」の重要性

一郎さんは、父の残りの株式を大切に保有しながら、「土台となる資産は、まだあります。これからは僕のやり方で、ゆっくりでも、父が減らした分を取り戻していければ」と話します。しかし、「せめて相続税分の現金があれば、株式の売却時期を選べたのに」――そんな気持ちを完全に拭い去ることはできません。

相続対策において、多くの人が見落としがちなのが「流動性」の確保です。資産の大部分を株式や不動産で保有していると、相続時に現金化に困ることがあります。特に株式の場合、売却タイミングが市場環境に左右されるリスクがあります。

理想的な相続対策は、相続税額の見積もりを行い、その分の現金を確保しておくこと。または、生前に段階的に株式を売却し、現金と株式のバランスを調整することです。 「父の投資戦略は間違っていませんでした。でも、相続まで考えた『出口戦略』があれば、もっと良い形で資産を引き継げたと思います」と一郎さんは語ります。

この経験は、資産形成期から相続まで見据えた総合的な資産管理の重要性を教えてくれます。