「お父さん、本当にお疲れさまでした」―75歳で静かに眠るように息を引き取った刈谷幸司さん(仮名)。30年間コツコツと積み立てた株式投資で、毎月20万円の配当収入を得ながら優雅な老後を過ごしていました。しかし、息子の一郎さん(仮名)が相続で受け取ったのは、予想をはるかに上回る「重すぎる贈り物」でした。資産形成の成功が、なぜ家族に重い負担をもたらすことになったのでしょうか。事前に打つ手はなかったのか、FPの青山創星氏と一緒に考えてみましょう。
(※写真はイメージです/PIXTA)
毎月20万円の配当金で優雅な老後を送った父、逝去。48歳息子〈時価1.2億円の株〉を相続するも、「とんでもない置き土産」に顔面蒼白【FPの助言】
なぜ税額はここまで膨らんだのか―見落とされていた「制度の落とし穴」
そもそも、なぜここまで税額が膨らんでしまったのでしょうか。最大の理由は、「小規模宅地等の特例」が使えなかったことにあります。
自宅については「小規模宅地等の特例」により評価額を最大80%減額できる可能性があります。ただし、別居している子が相続する場合は、いわゆる「家なき子」の要件を満たす必要があります。具体的には、相続開始前3年以内に本人または配偶者名義の持ち家に居住していないこと、相続時に自己または配偶者の持ち家を所有していないことなど、一定の条件を満たす必要があります。
今回のケースでは、一郎さんはすでに自宅を所有していたため、これらの要件を満たさず、この特例を適用することができませんでした。その結果、本来であれば400万円程度まで圧縮できた可能性のある自宅の評価額が、2,000万円のまま課税対象となってしまったのです。この差は1,600万円。税率40%で計算すると、相続税は約640万円も増えることになります。
「自宅があるから安心」 そう思っていた資産が、逆に税負担を押し上げる要因となってしまったのです。