有名大学を卒業し、大手企業で順調にキャリアを積んでいた自慢の長男が、37歳にして「FIRE」を宣言。6,000万円の資産で投資生活に入ると言うのですが、定年を迎えたばかりの石川さん(65歳、仮名)には理解の範囲を超えた選択でした。本当にお金は足りるのか? そして何より、働かない息子を誇りに思えるのでしょうか。FIREの課題と解決策について、FPの青山創星氏と一緒に考えてみましょう。
「父さん、僕はもう一生働かない」…資産6,000万円、大手企業勤務の37歳長男が意気揚々と〈FIRE宣言〉。3ヵ月後、65歳父の不安が倍増した「息子の変化」【FPの助言】
FPが指摘する「4%ルール」の盲点
どうしても息子の考えが理解できない石川さんは、ファイナンシャル・プランナーの永瀬財也さん(仮名)に相談しました。
「息子さんはおそらく、FIREの『4%ルール』に基づいて計算されたのでしょう」と永瀬さんは切り出しました。これはアメリカ発祥の考え方で、資産の50〜75%程度を株式に、残りを債券に投資し、毎年4%ずつ取り崩せば資産は尽きないとされるものです。
4%の根拠は米国市場の過去の平均成長率(年約7%)からインフレ率(約3%)を引いた数字で、必要資金は年間生活費の25倍。年240万円で暮らすなら6,000万円という計算です。
「理屈は明快ですが、落とし穴がいくつもあります」
永瀬さんの説明はこうでした。まず、4%ルールは米国市場の過去データに基づく経験則であり、為替や低金利など日本固有のリスクを踏まえれば、そのまま適用できるとは言い切れません。
また、リタイア直後に暴落が来ると資産が一気に目減りする「収益率の順序リスク」も見逃せません。年2%のインフレが30年続けば購買力はおよそ半分に落ちます。
さらに、退職直後の負担増も見落とされがちです。会社員時代は健康保険料の半分を会社が負担していましたが、退職後は国民健康保険に切り替わり全額自己負担になります。しかも保険料は前年所得で計算されるため、退職翌年は高額の請求が来ます。住民税も同様です。
加えて、60歳まで国民年金保険料(月約1万7,000円)の納付義務があり、37歳から23年間で約470万円。これらが計画に織り込まれていなければ、資産の目減りは想定以上に早まります。
そして最も深刻なのが受け取る年金への影響です。
「息子さんが厚生年金に加入していた期間は15年。会社員時代は高収入でしたが、加入期間が短ければ受給額も少なくなります。国民年金保険料を60歳まで払い続けても、将来の年金は月約12万円ほどでしょう。40年勤めた場合と比べれば、相当大きな差がつきます」