自立したキャリアを歩みながらも、親と同居を続けてきた独身女性。しかし、ふとした瞬間に自らの人生の選択に疑問を抱き、大きな決断を下す。ある母娘のケースから、親子の心理的距離の影響とその先にあるリスクについて考えていきます。
「結婚できなかったのは母のせいです」〈月収55万円〉50歳独身女性、〈年金14万円〉75歳母と決別した夜 (※写真はイメージです/PIXTA)

「親と同居する未婚者」が増える社会的背景

理恵さんのように、親と同居したまま中年期を迎える未婚者は、現代日本において珍しい存在ではありません。

 

総務省「国勢調査(2020年)」によれば、50歳時点での生涯未婚率は女性が約17.8%、男性が約28.3%となっており、30年前と比較して大幅に上昇しています。

 

特に注目すべきは未婚者の居住形態です。内閣府「令和4年版 男女共同参画白書」によると、40代から50代の未婚女性の約4割が親と同居しています。なかでも母親との同居率が高く、経済的・情緒的な依存や家事の役割分担が固定化されているケースが多いと指摘されています。感情的なつながりや相互ケアをベースとする親和的関係においては、心地よさの中に埋没し、自身の人生を主体的に選択する意欲が削がれてしまうことも珍しくありません。

 

理恵さんは高年収であり、母親も一定の年金を受給しているため、経済的な破綻は見られません。しかし、仮に母親に介護が必要になった場合、理恵さんは「キャリア」と「介護」の二択を迫られるリスクがありました。
これは「同居する親と未婚の子」がいずれ直面することになる大きな問題です。親が健在なうちに物理的な距離を置くことは、将来的な共倒れを防ぐ有効な手段であるとされています。

 

そのようななか、理恵さんのケースで転機となったのは、母親の「結婚しなくてよかった」という言葉でした。ここには、単なる親心だけでなく「介護や孤独への不安を子に委ねたい」という無意識の執着が潜んでいるように思えます。

 

しかしその言葉によって、彼女はこれまでの親子関係に疑問を持ち、自分の人生を問い直す決断をすることができました。50歳という年齢から考えると、相当なエネルギーを必要とする行為ではありますが、決して遅すぎるということはないのです。