長年住み慣れたわが家で、穏やかな老後を送る――。そんな当たり前が、子どもの一言で揺らいでしまうことがあります。ある親子のケースから、「住まいの終活」について考えます。
この家は売ってほしい…帰省中の45歳長男、衝撃の一言。年金18万円・72歳夫婦が初めて知った「持ち家老後」の現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

全国で増える「実家」と「空き家」の問題

小林さん夫婦のように、「実家を将来どうするか」という問題は全国で広がっています。

 

総務省『令和5年住宅・土地統計調査(2023年調査・速報値)』によると、日本の空き家数は899万5,000戸と過去最多を更新。空き家率も13.8%と過去最高となりました。特に増えているのが、賃貸や売却、別荘などの目的を持たない「その他の住宅」です。これらは、親が亡くなったり施設に入所したりしたあと、子どもが相続したものの利用方法が決まらず、放置されるケースが多いと指摘されています。

 

実際、この「その他の住宅」は過去30年で約2.5倍に増加。管理不全による建物の老朽化や倒壊、衛生環境の悪化などが社会問題化しています。背景にあるのは、少子高齢化に伴う「人口減少」と「住宅需要の低下」です。団塊の世代の高齢化で相続が発生し、都市部への人口集中により地方の住宅が放置されるケースが増えています。また、新築の過剰供給や、税制・費用面で解体をためらう心理も拍車をかけています。

 

持ち家を維持するには一定の費用が欠かせません。固定資産税に加え、屋根や外壁、設備などの修繕費が発生し、高齢世帯の家計を圧迫する場合もあります。そのため、老後の住まいについて「住み続けるのか、売却するのか」を早い段階で家族と共有しておくことが重要です。相続や空き家問題は突然発生するのではなく、ライフスタイルの変化のなかで徐々に表面化していくものです。

 

実家は家族の思い出が詰まった場所である一方、維持管理という現実的な課題も抱えています。老後の生活設計を考えるうえで、「住まい」の選択は、これから多くの家庭にとって避けて通れないテーマだといえるでしょう。