タワーマンション、高級車、華やかな交友関係……。周囲が富裕層やエリートばかりの環境に身を置くと、人は無意識のうちに「自分もそれに見合った暮らしをしなければ」という見栄やプレッシャーに縛られがちです。しかし、ステータスを維持するために多額の負債や高い固定費を背負い込むことは、本当に「豊かな人生」といえるのでしょうか。「あえて持たない」生活を選んだある資産家の次男の事例から、不確実な時代を生き抜くための真の自立とマネー戦略について解説します。
父と兄は会社役員、大学の友人は御曹司、コネまみれの月収37万円・恵まれた41歳独身次男…裕福な暮らしを望まず「家賃6万円・UR団地のワンルーム」で堅実に暮らす理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

コネまみれのなか生きてきたが…

都内の中堅商社で営業として働くソウスケさん(仮名/41歳)の月収は、約37万円。独身ということもあり、自由にできるお金は多いほう。ですが、特別浪費家というわけではありません。

 

しかし、彼の周囲環境は少し特殊です。父親は中小企業の元社長、兄は父親の会社を引き継ぐために現在役員を務めています。さらに、ソウスケさんが卒業した私立大学の友人たちは、代々続く企業の跡取りや、開業医の息子ばかり。友人たちとの飲み会では、都心のタワマンを購入した話や、この円安のさなか家族でヨーロッパ周遊旅行にいった話が当たり前のように飛び交います。

 

ソウスケさん自身も、営業成績は社内で常に上位をキープしています。しかし、彼は決して自分を過信していません。彼が獲得してくる大口契約のほとんどが、父親や兄の紹介、あるいは大学時代の裕福な友人たちの「ツテ」によるものだからです。

 

「要するに、コネまみれなんです。私自身の営業スキルや人間力で取ってきた仕事は、ほんの一握り。家族の威光、友人たちの厚意にぶら下がっているだけで、自分の本当の実力ではないと受け止めています」

 

成績に応じたインセンティブが入る月もありますが、この「コネ頼みの収入」が定年まで永遠に続くとは考えていないようです。そんなソウスケさんの現在の住まいは、都心から電車で1時間ほど離れた郊外にある、築古のUR団地のワンルームです。家賃は月に6万円。室内には最低限の家具と、趣味の読書のための本棚があるだけです。

 

周囲からは「お前の親ならマンションの頭金くらい出してくれるだろ?」「いつまでそんな古い団地に住んでるんだ、そろそろ家を買えよ」と度々いわれます。しかし、ソウスケさんはその誘惑に乗るつもりはありません。

 

「我が家のような家系では、自社株や不動産といった資産は跡取りである長男に集中します。私が就職する際、父からは『ツテは紹介してやるが、財産はお前にほとんど残らないと思え』とハッキリ宣告されました」

 

兄は莫大な資産を引き継ぐ立場ですが、次男のソウスケさんは「自活せよ」と放り出された、いわば一族の“スペア”と認識しているようです。

 

そしてもう一つ、ソウスケさんの考え方を決定づけたのが「兄の姿」でした。

 

「兄はすでに資産家ですが、常に会社の業績と一族の看板というプレッシャーに晒され、ストレスで何度も胃潰瘍で倒れています。休日に休む自由すらありません。そんな兄をみて、『資産を持つことは、資産に支配されることだ』と痛感したんです。私は一族のメインルートから外れたことで、『誰の期待も背負わなくていい自由』を手に入れました。この古い団地の部屋が、私にとっては精神衛生上いいんです。家賃が安い分、結構お金も貯まるので、年に1回海外旅行に行っています」

 

自分の実力の危うさを自覚しつつ、兄の姿から「持たない自由」の価値を学んだソウスケさん。恵まれた環境にいるからこそ、彼はあえて身の丈に合った堅実な暮らしを選んでいるのです。