たまに遊びに来てくれる、可愛い孫たち。ついつい甘やかして、子どもたちに怒られる――そんな絵に描いたような幸せな老後が、一瞬で崩れてしまうことがあります。特に「自分は大丈夫」という自信が強い人ほど、そのようなシーンに直面することが多いようです。ある男性のケースをみていきます。
情けなくて、情けなくて…「年金月20万円・70歳」の元教師、180万円で気づいた恥ずかしすぎる過信。警察署の帰りに突き付けられた残酷な現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

「自尊心の喪失」が招く孤立…公的機関が警鐘を鳴らす被害後の課題

石田さんのように、社会的地位のあった高齢者ほど、詐欺被害を「恥」と感じて周囲との関わりを断絶することもあります。

 

警察庁『特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等(令和7年・暫定値)』によると、特殊詐欺の認知件数は2万7,758件と、前年比31.9%増。また被害額は1,414.2億円、前年比96.7%増と、総認知件数、被害総額ともに著しく増加しました。また被害者の年齢層別では、65歳以上の被害の認知件数は1万4,232件と半数以上を占めており、高齢者がターゲットとなっている現状があります。

 

主な手口としては、オレオレ詐欺の認知件数が1万4,393件(前年比113.2%増)。架空料金請求詐欺5,686件(前年比0.5%減)、還付金詐欺3,184件(前年比21.8%減)と続きます。オレオレ詐欺の急増は、警察官等をかたり捜査(優先調査)名目で現金等をだまし取る手口(ニセ警察詐欺)が増えていることが要因だといいます。

 

こうした被害を防ぎ、また被害後の回復を助けるために、警察庁や国民生活センター等は以下の公的な指針や分析を示しています。

 

「犯人と接触しない」

物理的対策の推奨 警視庁や警察庁は、犯人からの電話を直接受けないための「自動通話録音機」の設置を強力に推奨しています。犯人は自分の声が証拠として残ることを極端に嫌うため、これが最も有効な未然防止策とされています。

 

「自分は大丈夫」という心理的バイアスの払拭

消費者庁「消費者白書」では、被害者の多くが「自分は騙されないと思っていた」と回答している点を指摘しています。特に元教職者などの専門職経験者は、自身の判断力への過信が相談を遅らせる要因になるため、「誰でも被害に遭う可能性がある」という前提を持つことが、公的に求められる自衛策です。

 

家族や周囲による「非難しない」サポート

国民生活センターの相談事例分析では、被害を責められた高齢者がさらに孤立し、別の詐欺(被害回復をうたう二次被害など)に遭うリスクが警告されています。被害者が抱える「情けなさ」を個人の落ち度として片付けず、巧妙にマニュアル化された組織犯罪による必然的な結果であると認識を改めることが、日常生活を取り戻すための現実的な判断となります。