定年後も続く住宅ローンは多くの世帯にとって看過できない課題です。完済予定が70代後半に及ぶケースも珍しくありませんが、現役時代と同様の返済計画が老後家計の首を絞めることもあります。ある男性のケースをみていきましょう。
悔やんでます…退職金2,000万円あるのに「一括返済」しなかった月収28万円・62歳男性の誤算。住宅ローン79歳完済の現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

住宅ローン、退職金で完済のつもりだったが…

東京都内に住む山中浩一さん(62歳・仮名)は、47歳のときに3,500万円の住宅ローンを組みました。借入期間は32年、完済予定は79歳です。山口さんは、60歳の定年時に退職金で一括返済する計画を立てていました。借入時に銀行側から、月々の返済額を抑えるために期間を最長で設定することを推奨され、それが合理的だと判断したためです。

 

一般的に、住宅ローンの完済時年齢の審査上限は79歳ですが、実態としての完済平均は73~78歳程度です。老後の家計安定には、再雇用が終了する65歳から70歳までの完済が理想とされます。山中さんも、当初は60歳の定年時に1,200万円の残債を清算し、65歳には負債をなくす計画を立てていました。しかし、60歳で2,000万円強の退職金を手にしたとき、山中さんは予期せぬ葛藤に直面します。

 

「いざ退職金が通帳に入ると、それを使ってしまうのが怖くなったんです。一括返済すれば老後資金が半分以下になってしまう。当時は金利も低かったですし、『手元に現金を残して、このまま分割で返せばいい。まだ働いているうちは大丈夫だろう』と、完済を見送ってしまいました」

 

この判断が、現在の生活を圧迫しています。再雇用により年収は約340万円(月収28万円)と定年前から約4割減少。さらに、マンションの管理費や修繕積立金が段階的に値上がりし、住居費の総額は月10万円(ローン7万円+管理費等3万円)に達しています。

 

「65歳からの世帯年金受給額は月約18万円の見込みです。そこから住居費10万円を引けば、残りはわずか8万円。そこから食費、光熱費、医療費を出すとなると、正直言って余裕は全くありません」

 

追い打ちをかけたのが、近年の緩やかな金利上昇でした。

 

「返済額がわずかに増えたこと以上に、精神的な負担が想像以上でした。70歳までの返済が続く以上、家電が壊れたり医療費がかさんだりするたびに、不安が大きくなる。50代のうちに無理をしてでも繰り上げ返済を進め、元本を減らしておくべきだったのか。今からでも繰り上げ返済したほうがいいだろうか……」