十分な蓄えと年金があるはずなのに、なぜか老後破綻が不安で仕方がない……。 老後の生活設計において、日々の生活費だけを計算に入れていると、予期せぬ大きな支出の連続に足をすくわれる恐れがあります。 ある男性のケースをみていきましょう。
預貯金「4,000万円」・年金「月20万円」65歳定年サラリーマン、高揚感に包まれながら会社員人生に幕。余生を満喫するはずが、わずか3年で「老後資金枯渇」を不安視「何かの間違いでは?」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「住宅」「介護」「孫」…生活不足分だけじゃない、老後の支出

総務省『家計調査 家計収支編 2025年平均』によると、65歳以上の高齢者夫婦(無職)の1ヵ月の支出は平均26万3,979円。 対し、税金や保険料を差し引いた手取り収入(可処分所得)は平均22万1,544円です。 つまり1ヵ月の赤字額は4万2,434円となり、単純計算で夫婦が100歳まで生きるとなると、1,800万円近くの取り崩しになる計算です。

 

「老後資金として夫婦で2,000万円あれば十分」といえそうですが、普段の出費からは見えてこない老後の支出も考えておきたいもの。

 

「孫・子」への教育資金贈与の実態

ソニー生命保険株式会社『シニアの生活意識調査2025』によると、直近1年間の孫消費は平均11万3,074円。 これはあくまでも平均額です。家庭によっては「大学の入学金を援助してくれないか」などと、まとまった支援を依頼されるケースも珍しくないでしょう。

 

住宅の「30年問題」と負の連鎖

国土交通省の資料等に基づくと、住宅の主要設備(給湯器、屋根、外壁、配管)は築25〜30年で一斉に更新時期を迎えます。 これに自身の加齢に伴うバリアフリー改修が加わると、数百万単位の出費が不可避となります。

 

医療・介護の「自己負担」のリアル

厚生労働省の統計では、生涯医療費の約半分は70歳以降に発生するとされています。 高額療養費制度があるとはいえ、差額ベッド代やリハビリの付随費用、さらには「親の介護施設への入居一時金」の立替えなど、行政の支援範囲外で発生する「まとまった現金」のニーズが資産を急速に浸食します。

 

生活費だけに注目すると、老後資金は「2,000万円あれば十分」と思えてきますが、それでは足りないというケースも珍しくありません。 また、昨今は不安定な経済状況のもと、「老後資金は安心確保のため使わない」という風潮もあります。 ただ、年金だけでは日々の生活は厳しいのが現状。極端に「取り崩しは悪」と考えると、いざ支出が重なったときに平穏でいることが難しくなるでしょう。

 

老後のためにいくら必要かは、家庭ごとに違うので一概にいえませんが、共通しているのは収入が限られる老後の家計は極めて脆弱であるということです。 「最悪のシナリオ」に基づいた資産形成を進めるとともに、「何とかなる」という心の余裕も、老後の安泰のためには必要です。

 

[参考資料]

ソニー生命保険株式会社『シニアの生活意識調査2025』