長年、会社のために身を粉にして働いてきた会社員にとって、定年退職時に受け取る「退職金」は、第二の人生を支える最大の柱といえます。しかし、いざ現役生活の終盤を迎え、示された現実に目を疑う人も少なくありません。ある60歳で定年を迎える男性のケースを見ていきましょう。
は?退職金が少ないんだが…定年を心待ちにしていた60歳元部長、「最低でも3,000万円のはずが…」絶句。通知書で知った“役職定年”の落とし穴 (※写真はイメージです/PIXTA)

管理職を襲う退職給付の変容

加藤さんのように、かつてのイメージと現実の乖離に苦しむ元管理職は増えています。その背景には、企業側による「退職金コストの固定化回避」という明確な意図があります。

 

中央労働委員会『令和5年賃金事情等総合調査』によると、大企業の定年退職金(大卒・管理/事務・技術職)の平均は1,911万円です。20年前の2003年調査では2,499万円であったことと比較すると、この20年で約588万円減少していることになります。この減少幅は、一般的な高齢夫婦世帯における約2年分の生活費(総務省「家計調査」より算出)に相当し、老後設計において看過できないインパクトを持ちます。

 

また、ポイント制の導入率は現在、退職金制度を持つ企業の約5割(50.3%)に達しています(厚生労働省『就労条件総合調査』)。この制度の最大の特徴は、「辞める直前の給与」ではなく「全期間の累積貢献度」で決まる点にあります。つまり、職業人生の後半5〜10年における役職定年などの「失速」は、ダイレクトに受取額を押し下げます。

 

【退職一時金制度の変更状況】

●変更した……20.6%

(内訳)

・算定方式の変更……27.6%

・支給率の変更……20.7%

・算定基礎給の変更……13.8%

・原資の一部、または全部を年金に移行……6.9%

・特別加算の変更……3.4%

・その他……37.9%

●変更していない……79.4%

 

解決策は、50代に入った時点で一度、人事部に「現在時点での累積ポイント」と「定年時のシミュレーション」を正式に依頼することです。ポイント制の場合、一度決まったルールは後から覆せません。
不足分をiDeCoやNISAなどの「自分年金」でどう補填するか。会社への「忠誠の対価」を過信せず、冷徹な数字として自身の権利を把握することが、絶望を防ぐ唯一の手段なのです。