大学生の春休みは、私立大学では早ければ2月上旬から、国公立大学でも2月下旬からスタートしています。就職先が決まり、卒業を控えた4年生は、遠方や海外へと「一生に一度の思い出づくり」に出かけている人も多いはず。しかし、華やかな卒業旅行の裏側には、見落としてはならない“重大なリスク”が潜んでいることも。本記事では、ある家庭で実際に起きた「卒業旅行」を巡るトラブルをもとに、若年層の事故リスクと、事故が引き起こす経済的・法的責任の重さについて解説します。
「バカなこと言わないで!」54歳・専業主婦母、絶叫。大企業に内定をもらった大学4年生の息子の〈卒業旅行〉を断念させたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

「一本の電話」に返す言葉もなく…卒業旅行は断念することに

そして、迎えた旅行当日。悪い予感がして朝早くに目を覚ましたノリコさんは、空になっている息子の部屋のベッドを見て、顔が青ざめていきます。

 

一方そのころ、これからの旅行に盛り上がる車内。いよいよ出発、となったタイミングで、マサキさんのスマホが鳴りました。

 

「もしもし? ちょっといま、どこにいるの!?」

 

母のあまりの剣幕に、返す言葉もありません。

 

「バカなこと言わないで! 取り返しのつかないことになる前にいますぐ帰ってきなさい!!」

 

そして、結局マサキさんは卒業旅行を断念することに。「おまえ、大丈夫? なんかあった?」心配する友人を尻目に、下手な言い訳をして帰宅の途につきました。

 

メンバーからは何件ものメッセージや不在着信が入っていたものの、返す気力も湧きません。こうして、マサキさんの大学最後の思い出は、苦い形で幕を閉じたのです。

データが示す「3月のレンタカー×若年層」の突出した危険性

警察庁や交通事故総合分析センター(ITARDA)の統計によると、レンタカー利用中の交通事故は圧倒的に「10代後半〜20代前半」に集中しています。なかでも事故件数が1年でもっとも跳ね上がるのが、春休み・卒業旅行シーズンにあたる「2月〜3月」です。

 

事故の原因として考えられるのが、「不慣れな車」と「不慣れな道」です。大学生などの若年層は、居住地やバックグラウンドによるものの運転経験が少ない場合も多く、ペーパードライバーにとっては運転そのものに不慣れな感覚があります。そのうえ乗り慣れていない「レンタカー」の運転となると、それだけで緊張と判断ミスを招きやすいといえます。

 

さらに、高速道路の合流や見知らぬ土地でのナビ操作、長時間の運転といった要素が重なると、たとえベテランドライバーであっても疲労や焦りが蓄積し、事故の危険性は一気に高まります。

 

事故が起きた瞬間、友人は「加害者と被害者」に変わる

もし事故が起きれば、その瞬間どれだけ仲のいい友人同士であっても「加害者と被害者」に立場がわかれます。もし後遺症が残ったり、最悪の事態になったりすれば、その影響は一生続くのです。

 

また、重大な交通違反や刑事事件に発展すれば、企業からの内定も当然取り消されます。さらに、友人の「将来得られるはずだった収入(逸失利益)」に対する賠償は、一人あたり数千万円~1億円規模におよぶケースもあります。自動車保険で補いきれない場合、同乗者への賠償を巡って親同士が裁判で争う事態に発展することも珍しくありません。

 

「最近の親は心配し過ぎ」という声もあるものの、取り返しのつかない事態に至っては元も子もありません。楽しい思い出づくりの裏側に、一度立ち止まって助言をしてくれる周りの人の意見も聞いてみることを勧めます。