老後の安心を求めて現役時代からコツコツと積み上げてきた資産が、思わぬ形で家計を圧迫する要因になることがあります。そんな“まさか”に直面した男性のケースを見ていきましょう。
質素倹約も意味なかったな…「年金月25万円」「預貯金3,000万円」75歳男性、役所の窓口で告げられた「まさかの事実」に呆然 (※写真はイメージです/PIXTA)

「預貯金2,000万円」が目安になるケースも

佐藤さん夫妻が直面した、介護保険制度における「資産要件の厳格化」という現実。2026年現在、このハードルは現役世代が想像する以上に高く設定されています。

 

厚生労働省の規定によると、介護保険サービスの自己負担割合は、本人の合計所得金額によって「1割」「2割」「3割」の3段階に分かれています。佐藤さんのように、年金収入が夫婦で年間211万円(市区町村により異なる)を超える世帯は、2割負担の対象となります。

 

さらに影響が深刻なのが、施設利用時の「補足給付(特定入所者介護サービス費)」の判定です。

 

段階 対象者の条件  預貯金等の資産基準(夫婦) 
第1段階  生活保護受給者、老齢福祉年金受給者  2,000万円以下
第2段階  世帯全員非課税・年金収入等80万円以下  2,000万円以下
第3段階(1)    世帯全員非課税・年金収入等80万円超120万円以下   1,550万円以下
第3段階(2)   世帯全員非課税・年金収入等120万円超  1,500万円以下
第4段階  上記以外(課税世帯や資産超過)  2,000万円超(補助なし)

 

2026年現在、資産判定基準は極めて厳密に運用されています。佐藤さんのように3,000万円の貯蓄がある世帯は、どれだけ年金が少なくとも「第4段階」と判定され、施設利用時の食費や居住費について一切の補助が受けられません。

 

行政の論理では、支払能力がある人には応分の負担を求める「応能負担」が公平であるとされています。しかし現場では、これが「真面目に貯金をした人ほど、手元に残るお金が減る」という逆転現象を生んでいます。日本の高齢者は「将来の介護や病気」を理由に貯蓄をする傾向が顕著ですが、皮肉なことに、その資産を基準を超えて持っているだけで、公的支援の網から外されてしまいます。

 

「3,000万円という数字は、決して贅沢をするための金ではありません。いつかどちらかが施設に入った時、最後まで安心して暮らせるようにと質素倹約を心がけてきた結果です。それが、行政の窓口では『余裕があるからもっと払え』と言われる。これでは、現役時代に何も考えずに使い切ってしまったほうが得だったのではないか、とさえ思ってしまいます」