食費に光熱費、公共交通機関にいたるまで、値上げが止まらない昨今。なかでも就業人口の約7人に1人を占める非正規雇用者は、低賃金にあえぐ生活を強いられているのが現状です。節約も限界を迎え、“禁断の一手”に手を出すケースも――。
お金なくて、夜の公園のトイレで…手取り月14万円・46歳非正規雇用の兄、バレる。41歳弟が「血の繋がりすら嫌になる」と嘆く、一線を超えた兄のゼロ円生活 (※写真はイメージです/PIXTA)

天井近くまで積まれたペットボトルの「中身」

錆びついた階段をのぼり、インターホンがないので木製のドアをノックしますが、応答はありません。恐る恐るカギのかかっていないドアを開けると、そこには想像を絶する光景が広がっていました――。

 

酸っぱいようなむわっとした臭いとともに目に入ってきたのは、6畳一間の壁際に、天井近くまで整然と積み上げられていた2リットルのペットボトル。ラベルはすべて剝がされており、その数は、ざっとみても50本以上はあります。

 

「兄ちゃん!?」思わず大きな声を出すと、奥の布団がもぞもぞと動きました。

 

「……なに」「兄ちゃん、俺だよ。おい、これなんだよ、やばいやつ? おい、早まんなよ!!」

 

弟が問い詰めると、ボサボサ髪の兄は長い沈黙のあと、頭を搔きながらポツポツといいました。

 

「……これ、ただの水だよ。毎晩、0時回ってからそこの公園のトイレで汲んできてるんだよね。けっこう重いから、何往復かすれば、運動にもなるしな。これがあれば、トイレを流すのも、体を拭くのもタダ」

 

兄は、周囲の目を盗んで公衆トイレの水を汲み、それを生活用水のすべてに充てていたのです。さらに、冬場にもかかわらずガス代を浮かすために一度も給湯器を使わず、公園の水で冷えた体を拭くだけで済ませていました。

 

「こうすれば、月に数千円は浮く。その数千円が、俺にとっては1週間分の食費なんだ」

 

兄のあまりの変わりように、弟は拒絶感を覚えました。小さいころは真面目で優しかった兄が、たった数千円のために夜な夜な公園で水を盗んでいる――。その惨めさと、どうしようもない境遇への怒りが混ざり合い、血がつながっていることすら嫌気がさします。

 

「兄ちゃん。それは節約じゃない、窃盗だよ。捕まったらいまの仕事もクビだと思うよ」

 

「帰ってきなさい」母の涙と、一時的な解決

コウヘイさんは母親に事実を報告。愕然とした母親は「そんな生活、もうやめなさい」と泣きながらユウジさんを説得し、結果としてユウジさんは15年ぶりに実家へ戻ることになりました。

 

実家での家賃なし三食付きの生活により、ユウジさんの顔色はみるみる回復し、危うい節約からも解放されました。しかし、これでは根本的な問題解決になりません。