超高齢社会を迎え、働き盛りの世代が直面する介護問題。介護者が子ども、しかも独身だった場合、経済的・精神的な負担が一人に集中し、生活が困窮するリスクも孕んでいます。ある男性のケースを見ていきます。
「母さん、ごめん。このままでは僕が壊れてしまう…」月収35万円・50歳独身息子、年金月12万円・75歳母へ懺悔の決断 (※写真はイメージです/PIXTA)

「介護離職」を避けるための「実家売却」

総務省『令和4年就業構造基本調査』によると、過去1年間に介護・看護を理由に離職した人は約10.6万人にのぼり、そのなかでも40代から50代の「働き盛り」の層が高い割合を占めています。

 

介護者が独身者の場合、介護を分担するパートナーがいないため、経済的・精神的負担が一点に集中します。厚生労働省『介護保険事業状況報告』などを参考にすると、民間の有料老人ホームの入居一時金や月額利用料は地域や設備によって異なりますが、月額20万円を超えるケースも少なくありません。

 

ここで多くの人が突きつけられるのが、「どうやって介護費用を捻出するか」という切実な問題です。貯蓄を切り崩すのにも限界があるなか、佐藤さんのように「実家を売却して資金を作る」という選択は、現実的な手段となります。

 

佐藤さんの場合、すでに自宅は本人名義になっていたといいますが、一般的に注意が必要なのは「認知症による資産凍結」のリスクです。

 

親の判断能力が失われ、本人の意思確認ができないとみなされると、親名義の不動産の売却手続きは法律上、極めて困難になります。いざ「お金が必要だから家を売ろう」と思っても、制度の壁に阻まれて身動きが取れなくなるケースは少なくありません。

 

法務省が推進する「成年後見制度」や、事前に家族で管理を決め合っておく「家族信託」などの仕組みを、親が元気なうちから検討しておくことも選択肢のひとつです。

 

「親を捨てる」のではなく「専門家に託す」。この意識の切り替えと、早期の資金・法律面の確認こそが、親子共倒れを防ぐ鍵となります。