佐久間均さん(仮名・61歳)の父親は質素倹約を絵に描いたような人でした。その父が急逝し、残されたノートから金融資産5000万円が発覚。しかし口座の詳細は一切不明で、手続きは困難を極めました。さらに、やっとの思いで手にした遺産が、佐久間さんの人生を狂わせます。相続の落とし穴を事前に知っておくことが最善の防御策。青山創星氏が詳しく解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
質素倹約を貫いた85歳父が、生前密かに貯めていた「“隠し財産”5,000万円」…予期せぬ大金を相続した61歳息子の「まさかの暴走」【FPの助言】
想像以上に重い手続き…驚く父の「まさかの過去」まで判明
父の資産を引き継ぐ手続きを始めましたが、知らないことばかりでした。証券口座の相続には自分も同じ証券会社に口座が必要です。父の特定口座は「源泉徴収なし」だったため、現金化すると譲渡所得の確定申告も必要になります。
さらに「改製原戸籍」という書類が必要と判明します。相続人を漏れなく確定するためには、父の出生から死亡までのすべての戸籍を遡る必要があったのです。この作業の過程で、実は父が養子だったという事実まで判明しました。自分のことを多くは語らなかった父に、思いを馳せることになりました。
相続税の申告・納付は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内が期限です。仕事をしながら、期限内にこれらを終わらせるのは、想像以上に大変な作業だったといいます。
相続税だけ考えればいいと思っていた佐久間さんは、資産の売却でも思わぬ税負担に直面します。特定口座の株式は父の取得費をそのまま引き継ぐため、長年の値上がり分すべてに課税されました。一方、NISA口座の資産は相続時に課税口座へ移され、その際の取得費は死亡日の時価に引き継がれます。そのため、相続後すぐに売却すれば、税負担はほとんど発生しません。
「生前に聞いていれば、売る順番を考えられたのに」
佐久間さんは悔やみました。 後に税理士から「相続した株式を相続開始から3年10ヵ月以内に売れば、納めた相続税の一部を取得費に上乗せして譲渡所得税を減らせる特例(取得費加算の特例)がある」と聞かされました。
結局、税金で数百万円を差し引かれることに。知っていれば売却の段取りも変わっていたはずです。知識がなかった代償は、決して小さくありませんでした。