「介護保険制度」ができてから約30年、日本の平均寿命は着実に伸び続け、世界トップクラスの長寿国を誇ります。これを支えているのが「国民皆保険」をはじめとした日本の公的保険制度ですが、財源不足や制度設計から、こうした制度が“限界”に近づいていて……。本記事では、高島亜沙美氏著、西智弘氏監修の書籍『人生の終わり方を考えよう 現役看護師が伝える老いと死のプロセス』(KADOKAWA)より、日本の医療・介護の現実を紐解きます。
日本人は、困ったら国や行政がなんとかしてくれると思っている…30年後には「介護保険制度」がなくなる可能性も。欧米の医療従事者が驚愕する「日本の特別養護老人ホーム」の現状 (※写真はイメージです/PIXTA)

いずれ「介護保険制度」そのものがなくなる可能性も

30代であるわたしが75歳を迎える頃には、介護保険制度そのものがなくなっているかもしれません。医療費の負担だってそうです。いまは原則3割ですが、これも以前は1割や2割の時代がありました。3割負担となったのは、2003年からです。

 

自分の健康は自分で守るのが基本、困ったときに国が半分出してくれる、というルールになれば、医療費だって原則自己負担5割の時代がくるかもしれません。

 

医療現場にいる身からすると、国民皆保険制度に頼り切っている患者さんが大半だなと感じます。みんな、困ったら医療機関にかかればなんとかしてくれると思っているんです。自分のいのちと生活を自分で守ろうという、セルフケア精神が低すぎます

国民皆保険制度、フリーアクセス…世界に類を見ない日本の“特権”

世界を見渡してみると、国民皆保険制度のない国で暮らしている人もいます。医療そのものにアクセスできず、亡くなっている人もいます。日本では救急車を、いつでもどこでも何回でも「無料で」呼ぶことができますよね。これは、そういう人たちから見ると、この上ない贅沢な行動だと思うのです。

 

それから、日本ではフリーアクセスと言って、自分の意思でかかりたい医療機関にかかれる権利を患者さんは持っています。けれども、住んでいる市区町村の決められた診療所にかかって診断書や紹介状をもらわないと、大きな病院で診てもらえないという国や地域に住んでいる人もいるんです。診察の順番を待っている間に、がんが進行して手遅れになってしまったという事例も聞いたことがあります。

 

日本の国民皆保険制度は、戦後から高度経済成長にかけては国の発展を大いに助けてくれたと思いますが、現在の日本社会においては何を助けているのか、わたしにはよくわからなくなるときがあります。誰かのいのちを救うために、他の誰かのしあわせや権利を奪っている場面も多々見かけるからです

 

日本は長寿であることを誇りにしていますが、長く生きるためなら寝たきりでもいいという文化は、発展して欲しくないなというのが個人的な意見です。

 

きっと、欧米の医療従事者が日本の特別養護老人ホームを見たら、人間の尊厳や人権の点からびっくりすると思います。この人たち、みんな自ら望んでいないのに、こういう状態になってしまったの? これは虐待じゃないの?って。