昨今、親の高齢化に伴い、独身の子が親と同居して生活を支えるケースが増えています。しかし、一見すると安定しているように見える家庭内でも、精神的な閉塞感や経済的な依存関係が深刻化している実態があります。「親を支えるのが当たり前」という価値観に縛られ、自分の人生を後回しに……。ある母娘のケースを見ていきます。
お母さん、もう限界、ごめんね……〈月収45万円・45歳〉のひとり娘、〈年金月13万円・72歳〉母との同居を解消した切実理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

親子間の「共依存」と高齢者の生活意識

佐藤さんの事例は、現代の日本社会における「親子共依存」の一側面を浮き彫りにしています。特に独身の子と親の間では、経済的・精神的な境界線が曖昧になりやすい傾向があります。

 

内閣府『令和5年版高齢社会白書』によると、65歳以上の者がいる世帯のうち、「親と未婚の子」のみの世帯は増加傾向にあり、全世帯の約2割を占めています。また、厚生労働省『国民生活基礎調査』によると、高齢者世帯の所得構造において、公的年金が総所得の8割以上を占める世帯が過半数に上ります。

 

ここで注目すべきは、親世代の「経済的自立」への意識です。株式会社リクルートの調査機関ジョブズリサーチセンターが行った『シニア層の就業実態・意識調査2023』によると、親世代の多くが「子には迷惑をかけたくない」と口では言うものの、実際には「精神的なケア」や「日常的な家事・経済的補填」を無意識に子へ期待している実態があります。

 

特に、美由紀さんのように収入が安定している子を持つ親の場合、「子に頼ることは正当な権利である」という心理的バイアスがかかりやすくなります。これを解消するためには、以下の2点が重要です。

 

1.家計の完全分離: 同居であっても、住居費や光熱費を明確に折半し、親の年金内で親の生活が完結する仕組みを作ること。

2.「心理的境界線」の再構築: 子の人生と親の人生は別物であるという認識を、ケアマネジャーや第三者を介して客観的に理解させること。

 

「いい娘」という役割を降りることは、親を見捨てることと同義ではありません。お互いが自立した個人として生きるための、建設的な決断であるといえます。