有料老人ホームへの入居後に、当初の資金計画を大幅に上回る請求に困惑するケースは少なくありません。その主な原因は、入居者の要介護度が進むことで発生する「加算」の仕組みです。都内の施設に入居したある夫婦の事例をもとに、契約書に記載された加算項目がもたらす収支への影響をみていきます。
最悪だ、貯金7,000万円がみるみる溶けていく…「高級老人ホーム入居」の70代夫婦が直面した「介護報酬加算」の現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

「要介護3」で急増する自己負担と加算の構造

佐々木さん夫妻のケースで起きたのは、介護保険制度における「介護報酬の加算」による負担増です。

 

介護付有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)の費用は、主に「基本料金」と「介護保険自己負担分」、そして「施設独自の加算」で構成されます。厚生労働省の資料(令和6年度介護報酬改定の概要)等によると、施設側は手厚い人員配置や専門的なケアを提供することで、国から認められた「加算」を算定できます。

 

具体的には、以下のような項目が利用者の負担を押し上げます。

 

●夜間看護体制加算: 夜間に看護師を配置したり、連絡体制を整えたりしている場合に発生。

●個別機能訓練加算: 個別のリハビリテーション計画に基づき指導を行う場合に発生。

●協力医療機関連携加算: 地域の医療機関と24時間の連携体制をとっている場合に発生。

 

特に、佐々木さんの事例で見落とせないのが「上乗せ介護費用」です。これは、介護保険法で定められた「入居者3に対しスタッフ1」という基準を超え、「2:1」や「1.5:1」といった手厚い体制を敷いている施設において、保険適用外の全額自己負担として請求されるものです。

 

生命保険文化センター『生命保険に関する全国実態調査(2人以上世帯)』によると、月々の介護費用の平均は9.0万円ですが、これはあくまで平均値です。

 

施設入居型の場合、要介護度が「3」を超えると、こうした加算や医療費、消耗品費(おむつ代等)が重なり、佐々木さんのように月額が数10%単位で跳ね上がる構造になっています。

 

入居前に「現在の健康状態」に基づいた試算しかしていない場合、将来の介護負担増によって、数千万円の資産があっても「老後破綻」の影が忍び寄るのが、現在の高齢者施設の現実です。