かつての「標準的な老後」のイメージは、止まらない物価高と実質的な年金額の目減りによって崩壊。最新の統計データを紐解くと、わずか1年の間に不足額の試算が数百万円単位で膨れ上がっているという驚くべき事実が浮き彫りになりました。 切実な状況に直面するある夫婦のケースをみていきます。
「長生きが怖い」貯金3,000万円・年金月28万円でも揺らぐ70代夫婦の老後…最新統計が示す「中間層」の現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

わずか1年で不足額が300万円増…統計が示す「老後資金1,500万円」時代の到来

総務省『家計調査 家計収支編 2025年平均』によると、65歳以上の無職夫婦のみの世帯における1ヵ月あたりの家計収支は、2025年時点で実収入が25万4,395円。さらに税金や社会保険料を除いた可処分所得は22万1,544円でした。 一方で消費支出は26万3,979円に達し、毎月の不足分(赤字額)は4万2,434円となっています。

 

2024年の調査では、可処分所得月22万2,462円に対し、消費支出は月25万6,521円、赤字額は月3万4,058円でした。 これを「老後30年」の期間で換算すると、2024年時点では約1,226万円の不足と試算されていましたが、2025年のデータでは約1,527万円まで膨れ上がっています。

 

【高齢者夫婦の1ヵ月の家計収支】

(2024年/2025年)

・実収入:252,818円/254,395円

・公的年金給付:224,186円/227,750円

・可処分所得:222,462円/221,544円

・消費支出:256,521円/263,979円

・赤字額:▲34,058円/▲42,434円

 

わずか1年の間に、老後に必要な準備資金の目安が約300万円も増加した計算になります。 この背景にある大きな要因のひとつが、深刻なインフレです。 年金額も「マクロ経済スライド」などの調整により一定の増額は行われていますが、実際の物価上昇率に追いついていないのが現状です。 つまり、数字上の受給額が増えていても、購買力という点では「実質的な減額」が続いていることになります。

 

もちろん、住居が持ち家か賃貸か、あるいは健康状態によっても必要な金額は変動します。 そのため「誰もが一律に1,500万円足りない」というわけではありません。 しかし、この1年で不足額が300万円も跳ね上がったという事実は、これまでの「老後2,000万円」という定説さえも、もはや楽観的な数字になりつつあるといえるでしょう。

 

資産寿命を延ばすためには、単なる節約だけでなく、インフレ耐性のある資産運用や、長く働き続けるための健康投資など、これまでとは異なる多角的な対策が求められています。