生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(2025年度)」によると、自分の老後生活に「不安感あり」とした人の割合は83.2%で、そのうち79.8%が「公的年金だけでは不十分」と回答しています。そこで今回、世帯年収900万円の50代夫婦を例に、年金に過度に依存せず、90歳まで生活を続けるために必要な貯金額をみていきましょう。石川亜希子CFPが解説します。
老後が不安です…世帯年収900万円・年金見込額月20万円の50代夫婦が「90歳まで不自由なく生きる」ために必要な、65歳時点での貯金額
世帯年収900万円・50代夫婦にかかる老後費用【シミュレーション】
■世帯年収900万円、50代夫婦の前提条件
・夫婦ともに中小企業に勤める会社員
・65歳で退職
・65歳時点の年金受給見込み額は夫婦で240万円(月20万円)
・持ち家(住宅ローン完済)
総務省の「2024(令和6)年家計調査報告」によると、65歳以上の夫婦のみ(無職世帯)における平均消費支出額は約25万6,000円となっています。そのため、生活費を月25万円と仮定します。
したがって、65歳から90歳までの25年間に必要な生活費は、月25万円×12ヵ月×25年=7,500万円となります。
一方、夫婦で公的年金を年間240万円(月20万円)受け取ると仮定すると、25年間の年金総額は6,000万円です。生活費ベースでの不足額は、単純計算で7,500万円-6,000万円=1,500万円となります。
ただし、この1,500万円はあくまで「生活費だけ」でみた不足額にすぎません。実際には生活費以外にも、医療・介護費や家の修繕費など突発的な支出の要素が加わります。
■医療費・介護費
厚生労働省「年齢階級別1人当たり医療費、自己負担額及び保険料の比較」によると、高齢期の医療費自己負担額は、年間平均7万円~9万円、25年間で200万円ほどかかると試算できます。
さらに、介護が必要となる可能性もあるでしょう。介護サービスの自己負担額の割合は所得に応じて異なりますが、今回の夫婦の場合は1割負担です。居宅サービスを限度額まで利用した場合、自己負担額は月2万円~3万円。この負担が10年間続くと想定すると、約300万円となります。
医療費と介護費を合わせると1人あたり約500万円、夫婦で1,000万円ほど見込んでおく必要がありそうです。
■家の修繕費
持ち家の場合、外壁や屋根、給湯器、水回りなどの補修・交換は避けられません。老後期間に大規模修繕を1~2回、細かな修繕を数回行うと考えると、300万円~500万円程度は必要になるでしょう。
■家電の買い替えや冠婚葬祭費など
さらに、家電の買い替えや冠婚葬祭費も無視できません。老後25年間で主要家電を1~2回買い替えると約100万円、自分たちの葬儀関連費用や親族の冠婚葬祭費を含めると、300万円程度は必要でしょう。
■旅行
生活維持や健康維持のための費用だけあればそれでいいというわけではありません。旅行などの“豊かな時間”にかかる費用も準備しておきたいところです。ここでは、100万円と考えます。
以上を整理すると、
・医療・介護費……夫婦で1,000万円
・家の修繕費……300万円~500万円
・家電の買い替えや冠婚葬祭費など……300万円
・旅行……100万円
■合計:1,700万円~1,900万円
となります。
ここに、年金では賄えない生活費1,500万円を加えると、老後に向けた理想的な備えは、夫婦で3,200万円~3,400万円が1つの目安と考えられるのではないでしょうか。