老後不安の背景にある「年金制度」への誤解

「老後、お金に困らず生きていけるのか」

50代ともなると、多くの人が一度はこんな不安を抱くのではないでしょうか。

それなりに収入があり、贅沢しているわけでもない、それでも老後のことを考えると、漠然と不安に襲われる……。

このような不安の背景の1つに、年金の性質が正しく理解されていないことがあります。

年金は、老後の生活を丸ごと支えてくれる制度ではありません。あくまで、最低限の生活を保障し、長生きに備えるための社会保険。

そう、「保険」なのです。

厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の受給額は平均15万289円となっています。受給額は個人差が大きいので一概にはいえませんが、生活をまるごと支えるには足りない場合が多いです。

つまり、「年金があるから安心」ではなく、「年金があるから最低限は守られる」という位置づけだと考えていたほうが現実的でしょう。

また、年金制度は今後も見直しが続く可能性があります。給付水準などに不確実性があることを考えても、年金だけを頼りに老後設計をするのはリスクが高いでしょう。

したがって、老後の家計は、「年金+自己資金」で設計する必要があります。

老後はいったいいくらあれば足りるのか?

では、いったいいくらあれば足りるのでしょうか? ファイナンシャルプランナーである筆者も、実際「老後が不安です。定年(65歳)までにいくらくらいの貯金があれば安心ですか?」という趣旨の質問をよく受けます。

しかしこの問いに、誰にでも当てはまる“正解”はありません。

生活費や住居費、家族構成、健康状態、働き方などによって、必要な金額は大きく変わってくるからです。どれも将来どうなるか予測が難しい要素であり、その組み合わせ次第で必要な金額が決まります。そのため、「自分にとっていくらあれば安心なのか」を明確に算出すことは簡単ではありません。

そこで、今回は1つの基準として、「年金に怯える老後は避けたい」と相談に訪れた世帯年収900万円の50代夫婦を例に、年金に頼らず90歳まで過ごすためのシミュレーションをしてみましょう。