2025(令和7)年9月、東京都で「第一子保育料無償化」が始まりました。子育て世帯にとって大きな前進となるこの制度ですが、手放しで喜ぶにはまだ課題も多いようで……。同制度の詳しい内容と無償化にともなう家計全体の影響について、具体的な事例をもとにみていきましょう。石川亜希子CFPが解説します。
結局なにも変わらないのかな…世帯年収1,000万円の49歳女性、東京都の「保育料等の第一子無償化」に冷ややかな目【CFPの助言】
東京都の「保育料無償化」ニュースにため息をつく49歳女性
東京都では、子育て支援の一環として、2025(令和7)年9月1日から「保育料等第一子無償化」制度が始まりました。これにより、年齢や所得にかかわらず、認可保育所などを利用するすべての世帯が対象となります。
ニュースでこの制度を知ったAさん(49歳)は、思わずため息をつきました。
「なんて羨ましい……」
Aさんは、同い年の夫と大学生・高校生の2人の子どもを持つ4人家族。夫婦共働きで、世帯年収は約1,000万円です。
Aさんが出産した当時は、「待機児童」が深刻な社会問題となっており、出産直後から保育園探しに奔走せざるを得ない状況でした。入園申込書には、自宅から通える保育園を片っ端から記入したものです。ようやく入れた保育園は、最寄り駅から自宅とは反対方向にあり、雨の日の送迎は本当に大変な思いをしました。
当然ながら、当時は無償化などという制度はなく、2人の子どもをそれぞれ6年間通わせた結果、かかった保育料は総額500万円以上にのぼります。
「私たちが払った保育料はなんだったの……?」
いまの子育て世代に対して良い制度であることは間違いありませんが、Aさんは複雑な気持ちになりました。
「保育料等の第一子無償化」でなにが変わる?
遡ること6年前、2019(令和元)年10月、国による「幼児教育・保育の無償化」制度がスタートしました。これにより、3~5歳児はすべての世帯で、0~2歳児は住民税非課税世帯に限り、保育料が無償となりました。この制度ができた背景には、子育て世代の経済的負担を軽減に加え、同時に始まった消費税10%引き上げへの配慮があります。
この制度に加え、自治体によっては独自の支援制度を上乗せしている場合があり、今回の東京都の施策もこのうちのひとつです。
東京都では、今回の制度に先駆け、2023(令和5)年10月より、0~2歳の第2子以降の保育料を無料にする制度をスタートさせています。これが9月からは、第1子も含め、所得や子どもの年齢にかかわらず、認可保育所等を利用するすべての世帯が無償化の対象となったのです。
これにより、世帯ごとに異なっていた負担が一律となり、「誰もが安心して子育てできる社会」に一歩近づいたといえます。
