年収1,200万円でも“余裕ナシ”の家計

令和7年6月、年金制度改正法が成立し、厚生年金などの標準報酬月額の上限が段階的に引き上げられることに――

そんな内容のニュースを見て、原田隆さん(仮名、47歳)はため息をつきました。

原田さん一家は、妻(44歳)と長男(小学6年生)、長女(小学2年生)の4人家族。都内の分譲マンションで暮らしています。

プライム上場企業に勤務する原田さんの年収は1,200万円ほど。高収入ではありますが、住宅ローンを抱え、子どもたちは2人とも中学受験の予定であることから、決して余裕がある暮らしとはいえない状況なのです。

そんななかでも、妻は「中学受験には伴走が必要だから」と、専業主婦を貫きます。

原田さん「子どもが小学生になったらパートで働くって言ってたのにな……」

そんな原田さん、数年前に管理職となってから、残業代はつかなくなりました。自分の業務の傍ら、部下のメンタルにも気を配り、話を聞き、ときには自分の小遣いで食事に連れて行きます。

「厚生年金保険料が上がるってことは、手取りが減るのか……どれくらいだろう? 『将来もらえる年金が増えます』って言われてもな……」

原田さんはまたため息をつきました。

厚生年金保険料の仕組み

日本の公的年金制度は「2階建て」の構造となっています。1階部分が国民年金(基礎年金)、20歳以上60歳未満のすべての国民が加入する年金です。2階部分が厚生年金、会社員や公務員が加入する年金です。また、企業や個人が任意で加入できる私的年金を3階部分ということもあります。

会社員や公務員は第2号被保険者として、給料から厚生年金保険料が天引きされます。給料から差し引いた保険料は事業主が納付しますが、保険料は加入者と事業主で折半して負担するため、給与から天引きされる厚生年金保険料は、本来負担すべき保険料の半分ということです。

この厚生年金保険料は、保険料が一律ではありません。給与(標準報酬月額)によって異なり、「毎月の給与(標準報酬月額)×保険料率」という計算によって算出されます。また、賞与の際は「標準賞与額×保険料率」という計算式です。なお、保険料率は都道府県によって異なります。

今回、厚生年金保険料を計算する基準となる「標準報酬月額」が引き上げられる予定です。これにより影響を受ける人は、被保険者のうち約6.5%、約277万人といわれています(令和6年6月現在)。