死亡や認知症によって口座が凍結されると、原則として遺産分割協議が終了するまでは預金を引き出したり動かしたりすることができません。ただし、実は「所定の手続き」を行うことで、相続預金のなかから一定額まで払い戻しを受けることが認められています。事例をもとに、その仕組みと注意点をみていきましょう。山﨑裕佳子CFPが解説します。
「親が亡くなった」と銀行に報告→即〈口座凍結〉されたが…凍結された親の口座から、合法的に〈最大150万円〉引き出す方法【CFPが「相続預金の仮払い制度」のポイントを解説】
家庭裁判所を経ずに払い戻しを受ける方法
2.金融機関から単独で払い戻しを受ける
各相続人は、相続預金のうち、口座ごとに次の計算式で求めた額について、金融機関から単独で払い戻しを受けることができます。
相続開始時の預金額×3分の1×相続人の法定相続分
ただし、同一金融機関(全本支店合計)での上限額は150万円です。
たとえば、相続人が母と子どもの2名で、相続開始時の普通預金が1,500万円の場合、計算上は「1,500万円×3分の1×2分の1=250万円」ですが、上限額の150万円を超えるため、仮払い可能な金額は150万円となります。
なお、金融機関で直接払い戻し手続きをする場合の必要書類は下記のとおりです。
(1)被相続人(故人)の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)
(2)相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
(3)払い戻しを希望する人の印鑑証明書
ただし、銀行独自の提出書類がある場合も多いため、事前に金融機関に問い合わせてから進めるとスムーズでしょう。
「相続放棄」を検討している場合は要注意
ケンイチさんは、上述2.の方法によって、相談したA銀行から150万円、B銀行から50万円、合計200万円の仮払いを受けることができました。これにより、病院や葬儀会社への支払いを無事に済ませることができ、また母の当面の生活費も確保できたそうです。
この制度がなければ、一時的にせよ自分の定期預金を解約して数百万円の費用を立て替えることになっていたでしょう。
ただし、合法的な方法とはいえ、相続人が複数いる場合には、後々のトラブルを避けるためにも、事前に他の相続人の了解を得ておくと安心です。
また、遺産分割前に故人の預金を引き出してしまうと、その相続人は、のちに「相続放棄」ができなくなることがあります。相続放棄の可能性がある場合は、事前に専門家への相談を検討してください。
山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI
代表